使えない上司・使えない部下

2020年8月4日

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 今回は人事コンサルタントで、コンサルティング会社カルチャリア(東京都港区)代表取締役社長の奥山由実子さんを取材した。

 奥山さんは大学卒業後、企業研修専門会社で企画、営業、マネージメントを担当する。1993年、同社駐在員としてニューヨークへ赴任。退職後、現地のアメリカ人と異文化コミュニケーション、HR分野に特化した人事コンサルティング会社を設立。在米の日系企業向けに約15年間で1500社のコンサルティングをする。帰国後の2006年、都内に人事コンサルティング会社イマジナを設立。ベンチャー企業、中堅、大企業の人材育成や社内研修に関わる。売却後、2017年にワークスタイル改革を主な事業とするコンサルティング会社カルチャリアを設立。全国の企業の研修講師や講演、カウンセリングでも活躍する。

 奥山さんにとって「使えない上司・使えない部下」とは…。

(uzenzen/gettyimages)

管理職や役員をしている女性はすばらしい

 日本の会社員の男性は怖い。特に同世代で昇格が速かったり、仕事ができる女性への嫉妬がすさまじい。脅威と感じると、活躍の場を奪ったりして潰すことがあります。私は中堅、大企業に勤務する管理職や役員の女性のカウンセリングをしますが、最近は悩んでいる人が増えているのです。「もう、幹部をしたくない。いじめに耐えられない」と漏らします。

 多くの企業が女性の幹部を増やそうとしています。男性の中には自分よリも早く昇格する女性をねたましく思い、いじめをする人がいるようです。書類を渡さなかったり、会議に呼ばなかったり…。女性を優遇しようとする男性の役員がいると、「2人は不倫」と社内で吹聴することもあるそうです。同性である女性の中にも嫉妬する人がいますが、比率としては男性が多いように思います。

 そのような悩みを聞かされているので、コンサルティングの際に中堅、大企業の人事部の管理職や担当役員に「数人だけの女性を幹部にするのではなく、一定数を一斉に管理職や役員にしたほうがいいですよ。そうでないと、男性から潰される可能性がある」と言っています。残念ながら、状況はなかなか変わりませんね。

 日本では女性の管理職や役員は中堅、大企業で数パーセントから20%前後が多い。中小企業やベンチャー企業でも、その傾向があります。30∼40%の企業がありますが、全体からみるとそれは少ない。これでグローバル化と称して海外進出をしたり、外国資本を受け入れようとしても、様々な意味で無理が生じると思います。欧米先進国では、女性の管理職や役員ははるかに多いのです。日本の数パーセントは、明らかにおかしい!

 男女逆差別? いいえ、私は女性を必要以上に優遇すべきとは言っておりません。女性もまた、男性と同じく、たとえば、状況に応じて国内の転勤や海外勤務をすべきです。そのあたりは双方を公平に扱う必要がありますが、活躍の機会すら与えないのは問題だと強調したいのです。そして、その機会をつかんだ女性を何ら非はないのに、引きずり下ろすのは深刻な問題と思っているのです。

部下の育成が苦痛ならば、「会社を辞めましょう」

 コロナウィルス感染拡大の影響もあり、男女問わず、これからは管理職のあるべき姿は変わっていくはずです。在宅勤務をする人が増え、社員間の意思疎通が難しくなります。管理職には、レベルの高いチームビルディングがより一層に求められます。不況が深刻化し、部署の業績を維持し、拡大するのはますます難しくなるでしょう。優秀な女性の管理職にはチャンスです。

 少子化は一段と進み、会社として売上や利益をこれまで通りに確保するのは困難になります。最近は黒字リストラをする企業が目立ちますが、今後の日本企業のあり方を示唆しているように私には見えます。

 厳しい時代になるのに、相変わらず、部下を「使えない」なんて言っている管理職はもう、アウト!状況認識ができていませんね。たとえば、部下が3のレベルならば、モチベーションやスキルをアップして、10のレベルにしてほしい。10までいかずとも、せめて5や6にしていただきたい。本来、それが上司の役割です。「部下が使えない」と不満を言う管理職から話を聞くと、心の中で「お前だよ、使えねぇのは…」と思ってしまいます…(苦笑)。

 私はかつてニューヨークで会社を10数年、経営していました。その時の経験をもとに言えば、アメリカでも部下のことを「使えない」と言う場合がありますが、その前後に上司は部下との関係づくりに熱心なのです。そうしないと、部下は次々と辞めていく。裁判に訴えられる場合もあります。日本では、関係づくりがあまりできていないように思います。最近、パワハラと訴えられるケースが増えている一因はこのあたりにあるのです。

 カウンセリングをすると確かに、上司は業務の適性範囲を逸脱した圧力を部下に加えているケースがあります。部下が受け止める業務の適性範囲の認識とに開きがあり、そこで「これはパワハラだ」とトラブルになることが多い。今は、中堅、大業では部下を罵倒したり、殴るケースは相当に少ない。業務の適性範囲について、上司と部下の間で共有認識が欠けているからパワハラとなりやすいのです。ところが、会社としてそのことを全社規模で教えていない。

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