2024年12月5日(木)

ニュースから学ぶ人口学

2023年4月7日

 2月末に人口動態統計の速報値が発表され、2022年の外国人を含む出生数が80万人を下回ったことが明らかになった。結婚件数や妊娠届の動向から予想されたことだったが、実際に数字が示されると、その衝撃は大きかった。

 これは将来推計を11年も早く先取りしたことを意味する。コロナ禍における一過的な落ち込みに過ぎず、出生数が再び回復するかどうかは不明だが、人口減少に拍車がかかったことは間違いない。

(Sasiistock/gettyimages)

 加速する人口減少に対して、政府が全く無策というわけではない。年頭の記者会見において、岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を講じることを明言し、4月1日には子育て支援を強化するためにこども家庭庁が発足した。

 これに先立って3月31日、「異次元の少子化対策」のたたき台が、小倉將信こども政策担当大臣から発表された。具体策については、こども家庭庁が発足してから詰めていき、6月の経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」に盛り込むとしている。

 たたき台では、今後3年間に取り組むべき政策を「こども・子育て支援加速化プラン」として掲げた。検討すべき課題として示されたのは、1)出産への保険適用の検討、2)児童手当の拡充(所得制限撤廃、支給対象年齢の高校卒業までの延長、多子世帯への支給額見直しなど)、3)両親が育児休業を取得した場合の給付額引き上げによる手取り収入の維持、4)保育所の利用要件緩和(「こども誰でも通園制度」)と保育士の配置基準見直し、5)子育て世帯への住まい支援(公営住宅などへの優先入居、多子世帯の住宅ローン金利負担軽減)、6)学校給食の無償化と高等教育にかかる負担軽減策の検討などとなっている。

足りない未婚化への対策

 たたき台で示された対策案は、果たしてじゅうぶんな効果を上げることができるのだろうか? 出産手当、児童手当、育休取得に対する給付額の拡充案などは、ある程度の効果が期待できるだろう。すでに子どもを持っている家庭にとって、確かに経済的負担の軽減になる。もう一人子を持つように背中を押してくれることも期待される。まだ子のいない夫婦にとっても、安心して出産しようと一歩踏み出すかもしれない。

 しかし、まだ結婚していない若者たちに対して、結婚へ踏み切らせるのに十分な効果を発揮できるのだろうか。たたき台の説明会見では未婚化については、出会いサポートセンターのようなマッチング・サービスへの言及と、若者の所得が伸び悩んでいることへの指摘はあったが、それを改善させる施策についてはほとんど触れられることはなかった。


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