2023年9月24日(日)

#財政危機と闘います

2023年4月5日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 異次元の少子化対策のメニューのたたき台が3月31日に公表された。ただし、そこには財源が明記されていない。ただ、岸田文雄首相はすでに消費税の引き上げは「10年間行わない」と明言しており、どうやら報道を見ていると、財源は社会保険料の引き上げで決定のようだ。

(Viktor Aheiev/gettyimages)

 筆者は日頃、異次元の少子化対策の財源としては、①社会保障のスリム化→②高齢者給付からの付け替え→③消費税引き上げを主張しているが、今回は、こうした財源確保策のどれでもないもう一つの新たな財源確保策を提案したい。

独身税、子なし税となる社会保険料引き上げ

 現在、「異次元の少子化対策」の財源として有力視されている「子育て支援連帯基金」では、年金や医療、介護の各社会保険から一定額ずつを連帯基金に拠出し、子ども関連予算に充てることとされている。こうした考え方の背景には、少子化対策で人口が増えれば、少子化、高齢化の進行で危機に瀕している社会保障制度維持にも貢献するとの理屈がある。ただし、社会保険料への上乗せは、結局、増税と同じであり、個人も企業も負担が増えることになる。

 あるいは、昭和女子大学特命教授の八代尚宏氏は、20歳から39歳までの若者に新たな負担を課す新しい社会保険制度「こども保険」の創設を提唱し、「小さな政府」から一転して「大きな政府」への線路を敷こうとしている。

 少子化対策に限らず、何らかの政策が実施されると、その政策は必ず不公平を生み出す。少子化対策の場合は、未婚者、非婚者、すでに子育てが終わった者から、既婚者、子あり世帯への所得再分配が発生する。

 つまり、これから子育て支援の給付が充実したとしても、それに比例して、結婚予備軍や出産予備軍の負担が増すことになれば、その分だけ少子化対策の効果が削がれ、場合によっては少子化が加速することになるかもしれない。

 特に、「子育て支援連帯基金」であれ「こども保険」であれ、結婚予備軍、出産予備軍の若い独身者や子なしカップルも社会保険料を負担することになる。これは事実上の独身税、子なし税として機能することとなる。


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