岸田文雄首相が1月4日の年頭の会見で「異次元の少子化対策」をぶち上げ、有識者で作る新たな会議の設置を指示した。この会議は小倉將信少子化対策担当大臣をトップとし、有識者のほか、財務、厚生労働、文部科学各省などで構成されるようだ。
なお、岸田首相が「異次元の少子化対策」を発表した同日に、東京都の小池百合子知事が所得制限なしで月5000円の給付金支給を発表した。機を見るに敏といえばそれまでだが、新型コロナウイルス対策でロックダウンを先走って口にした結果、その後の政府の新型コロナ対策が先鋭化していったことを思えば、単なるバラマキ合戦に堕してしまうのではないか、悪い予感しかしない。
なぜ、過去の少子化対策は〝失敗〟したか
それはさておき、日本の少子化対策は、1990年のいわゆる1.57ショックを契機に開始されたエンゼルプランを嚆矢(こうし)とする。
エンゼルプラン以降、児童手当、子どもの医療費無償化、高校無償化等、さまざまな少子化対策が拡充されながら実施されているにも関わらず、少子化に歯止めがかかっていない。この点に鑑みれば、これまでの少子化対策はいずれも控えめに言っても失敗だったと評価せざるを得まい。
岸田首相が「異次元の少子化対策」を実施するにしても、なぜこれまでの少子化対策が失敗したのか検証が必須だ。3月末までにたたき台を示すというのは拙速にすぎる。結局、時間とおカネの浪費にしかならないのではないか。
そもそもこれまでの少子化対策は、出生数を目標にしたものか、出生力を目的にしたものなのか、そして何のための少子化対策なのか、その目的がハッキリしていなかった。今回の対策はどうだろうか。
出生数の変動の要因は、子を持つ適齢期(と考えられている)15歳から44歳までの女性人口と総出生率に分けられる。
1980年と2020年を比較すると、15歳から44歳までの女性人口は24%減少、総出生率は30%減少している。つまり、社会の出生力が低下しているのに加えて、女性人口が減少しているので少子化が進行しているのだ。その意味では、出生数の増加は現時点では移民を認めない限り、絶望的だ。
22年の出生数は80万人を下回ったのは確実だが、足元の15歳から44歳までの女性人口を前提に、例えば100万人程度(15年では出生数は100.5万人で16年には97.7万人と100万人を下回った)の出生数を実現しようと思えば、総出生率を41.8‰から49.7‰(1987年が50.4‰、1988年が49.1‰)へ引き上げなければならない。もしくは、現在の総出生率を前提として出生数を増やすには、女性人口を453万人増やさなければならない。