2024年11月21日(木)

#財政危機と闘います

2023年1月6日

財源調達方法で変わる少子化対策の効果

 報道を見る限り、今後設置される会議では児童手当を中心とした経済的支援の強化、子育て家庭を対象としたサービスの拡充、働き方改革の推進が検討項目として上がっている。その中で、児童手当の恒久財源として消費増税が検討されているようなので、子育て予算の充実と、その財源調達の違いが出生数に与える影響を考えてみたい。

 筆者は、過去の出生率の推移を、婚姻数、税引き後所得、女性所得、家族向け社会保障給付、高齢者向け社会保障給付、社会保険料、消費税負担、政府債務残高を用いて推計した。その関係性を示した推計式が以下である。

出生率=10.96+0.213×婚姻数+0.369×税引き後所得-0.306×女性所得+0.014×家族向け社会保障給付-0.105×高齢者向け社会保障給付-0.330×社会保険料-0.003×消費税負担-0.0004×政府債務残高

 この推計式を用いて22年の出生数を試算したところ、78.2万人、さらに、20年以降の3年間で新型コロナ禍で失われた出生数は11.4万人となった。

 この推計結果を用いて、以下の政策の効果を比較・検討する。

(ケース1)家族向け社会保障給付10兆円増加。これは20年度現在の家族向け社会保障給付は10.8兆円なので子育て予算倍増に相当する。

(ケース2)ケース1を実現するための財源調達手段として、同額の国債を発行する。

(ケース3)ケース1を実現するための財源調達手段として、同額の消費税を引き上げる。

(ケース4)ケース1を実現するための財源調達手段として、同額の高齢者向け社会保障給付を引き下げる。

(ケース5)ケース1を実現するための財源調達手段として、同額の社会保険料負担を引き上げる。

 以上のケースの結果は表の通りとなった。

 結果からは、高齢者向け社会保障削減の効果が最も大きく、ついで全世代で広く負担を分散できる消費増税による財源調達、赤字国債による財源調達は結局将来の負担増なので少子化政策拡充の効果が消費増税よりも多く相殺されてしまうことがわかる。何より子育て適齢世代を含む勤労世代に負担が偏る社会保険料負担増による財源調達は子育て政策拡充の効果を打ち消してしまうことが指摘できる。


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