2022年12月23日、こども家庭庁の新規予算が公表された。目玉となった新規事業は、クーポンばら撒き、その場しのぎの対策という、「大人まんなか社会」を象徴するものとなった。岸田文雄政権は23年6月に子ども予算「倍増」に向けた当面の道筋を示すというが、現在の増額はわずか2.6%。残り97.4%の予算確保の目途は立っていない。
こども家庭庁は何を目指すのか
22年12月23日、23年4月に発足する「こども家庭庁」の予算が発表された。子ども、若者、子育て支援を一元化する政府肝いりの組織改革である。
21年に開催された第1回会議では、「常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会の真ん中に据えて(『こどもまんなか社会』)、こどもの視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押し」するものとして、新たな司令塔としてこども家庭庁を創設することを宣言した(出所:内閣官房「第1回子ども政策の推進にかかる作業部会」資料, 2021年7月7日)。
冒頭の小倉將信大臣のコメントは、その理念を端的に表したものである。こども政策の大転換ともいえる新たな組織の誕生に対して、メディアや国民の反応は冷淡に見える。筆者が確認した限りでは、新規事業や人員体制といった政府発表を除いて目立った報道はみられない。賛否両論の議論さえ起らない。
23年度予算案は4兆8104億円、22年度に厚生労働省や内閣府が計上した関連予算と比べて1233億円(2.6%)の増額にとどまる。岸田文雄首相は子ども関連予算の「将来的な倍増」を掲げるが、関係団体から更なる増額を求める要望が世間を騒がすこともない。増税への強い反対で迷走する防衛費増額の議論のなかで、「これ以上の増税は困難」という声が圧倒的である。