2022年12月9日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年11月25日

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誰にでも必ずサッカー人生に〝一線を引く〟時が来る(ALEKSANDRA SZELAG/EYEEM/GETTYIMAGES)

 誰にでも必ず〝その時〟はやってくる――。今年も、長きにわたって日本代表を牽引した中村俊輔選手(横浜FC)や、川崎フロンターレなどで活躍した元北朝鮮代表・鄭大世選手(FC町田ゼルビア)が現役引退を表明した。

 彼らのようにプロの世界で輝かしい実績を残す選手もいれば、プロになれても日の目を見ぬままキャリアを終える選手もいる。無論、多くの人は一度はプロを夢見ても、早晩、区切りをつけてその人自身の〝一線〟を退く。その後は、誰もが社会の一構成員としてそれぞれの道を歩むのである。

「外」との交流で磨く
社会で欠かせぬ言語化能力

 「シーズン中は週に1回、試合の日が来る。勝利を求められるプレッシャーに加え、最近は誰でも簡単に試合を視聴できるため『勝敗を左右するミスをすれば戦犯扱いを受けるかもしれない』という精神的な重圧ものしかかる。いつ職を失ってもおかしくない〝リスキー〟な労働環境を考えれば、サッカー以外のことにも目を向けるべきだ。ただ、それを分かっていても、正直サッカー以外のことを考える余裕はあまりない」。徳島ヴォルティスで活躍した元プロサッカー選手・井筒陸也氏はこう打ち明ける。

 また、「プロの選手は快活な人が多く、いい意味でフラット。共通言語が多く、その世界が楽しすぎるため、『外』の世界に目を向けようという意識が生まれにくいのかもしれない」と振り返る。

 JFL(J3の1つ下のカテゴリー)に属する「クリアソン新宿」の代表を務める丸山和大氏は、「アスリートが活躍するには感覚や直感も重要だが、彼らは自身の思考や経験の言語化が苦手で、その機会も不足していた」と語る。

 自身は総合商社の出身。「毎年入社してくる体育会学生が、実績は十分でも『なぜこの会社なのか』『何を成し遂げたいか』を深く考えず入社し、3年程度は〝彷徨っている〟ように見えた」という。2013年、Criacao(東京都新宿区)を興すと、クラブ運営を手掛ける「クラブ事業」のほか、体育会学生のキャリア形成支援をする「キャリア事業」、アスリートと社会人が交流する場を創り、互いの価値観を交換する「アスリート事業」を柱にした。

 「アスリートの得難い経験や感覚などの非言語領域にこそ、一般社会に応用・還元できる貴重な知見が詰まっているはず。だからこそ、社会人には欠かせない『言語化』する能力をアスリートが磨けば社会にとってWin-Winになるのではないか」(丸山氏)

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