11月20日にサッカーのFIFAワールドカップ(W杯)が開幕し、カタールの地で国の威信をかけた熱戦が繰り広げられている。しかし、このW杯を選手、戦術、対戦カードに着目して観戦するだけではもったいない。
前編では、サッカーの潮流と政治の関係を中心に、スポーツジャーナリスト・河治良幸氏と安全保障専門家・高橋杉雄氏が語り合った。後編では、ロシア・ウクライナ戦争下での出場国の動きや日本代表への期待について、熱く議論する。
(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
前編では、サッカーの潮流と政治の関係を中心に、スポーツジャーナリスト・河治良幸氏と安全保障専門家・高橋杉雄氏が語り合った。後編では、ロシア・ウクライナ戦争下での出場国の動きや日本代表への期待について、熱く議論する。
(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
サッカーから見える
米国の安保上の強み
高橋 カタールW杯の出場国を政治や安全保障のフィルターを通してみるとさまざまな特徴が挙げられる。米国の条約上の同盟国は、日米同盟や米韓同盟、北大西洋条約機構(NATO)を合わせ計15カ国ある(編集部注:イングランドとウェールズは同じ英国だがダブルカウントしている)。さらに条約未締結だが同盟国扱いのサウジアラビアとカタールを含めると17カ国になる。米国が結んでいる同盟ネットワークの強さがサッカーから見えてくるというのは興味深い。米国の同盟国には豊かな国が多いという証拠なのかもしれない。
河治 代表チームの活動を考えると、国自体が豊かでないとチームの強化は難しい。国際親善試合の対戦相手の招致(マッチメイク)、選手の移動や練習環境の整備にも資金が必要になる。金銭的な支えの有無がチームの浮沈に影響することは明らかだろう。
高橋 もう一つ興味深いのは、核拡散防止条約(NPT)で認められた核兵器国のうち、西側の核保有国である米国、英国(イングランドとウェールズ)、フランスはW杯に出場しているが、中国とロシアは出場していない。さらに、NPTで認められていない核保有国であるインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の4カ国はW杯に出場していない。核開発を行うことができても、サッカーではW杯の舞台に出場できていないという点は、シンプルに興味深い。その意味ではイランの今後は気になる。