2024年4月24日(水)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年11月22日

――サッカーの強豪国スペイン、オランダ、フランスはどうか。

高橋 スペイン、オランダは現代軍事における存在感はないに等しい。見方によっては、平和であるがゆえにサッカーがしっかりでき、実力をつけてきたのかもしれない。

 一方、フランスは統率のとれた一流の軍事力を有した国である。ニューカレドニアに太平洋艦隊を維持しており、対中政策では日米に近いポジションを取っている。朝鮮半島有事や台湾有事が発生したときには、一定の軍事力を展開することもあり得る。

河治 フランスは全てにおいてバランスが取れており、優勝候補の一つに挙げられる。世界年間最優秀選手に贈られる「バロンドール」を2022年に受賞したベンゼマや若きエースのエムバペなど粒揃いであり、統率さえ取れれば爆発的な力を発揮する(編集部注・11月19日、ベンゼマが怪我によりカタールW杯を欠場することが発表された)。

 一方、タレント集団であるがゆえ、一つの目標に向かって煮詰まっていく中で何か問題が生じるとチームワークが突然崩壊するリスクを抱えている。10年の南アフリカ大会では、初戦に敗れた後にチームで内紛が起こり、選手が練習をボイコットするなど、結果的に未勝利のまま大会を去ることになったという経緯もある。

ロシア・ウクライナ戦争で
出場国が見せる動き

河治 高橋さんは連日テレビに出演し、ロシア・ウクライナ戦争の情勢を解説されている。W杯出場国の戦争下での動きをどう分析するか。

高橋 今回の出場国のうち親露派と言い得るのはイランとセルビアである。イランは自爆ドローンをロシアに渡すなど、ロシアを支援する動きを見せている。セルビアはロシアとの結び付きが強いものの、ウクライナ4州で強行されたロシアへの編入を問う〝住民投票と称する行為〟の結果を「国際法違反」として批判している。

 一方、ウクライナ支援に積極的な国は、NATO加盟国のポーランド、フランス、ドイツの3国だ。韓国も陸戦重装備をポーランドに輸出することになった。ただし、ドイツは開戦当初、ウクライナへの支援を渋るなど煮え切らない態度を見せた。この動きの鈍さは、サッカー・ドイツ代表の春以降のさえない成績を象徴しているかのようだった。

河治 ドイツは前回大会ではグループリーグ、そして、21年の欧州選手権ではベスト16で敗退し、レーブ前監督の15年にわたる長期政権が幕を閉じた。しかし、ドイツ・ブンデスリーガの強豪クラブのバイエルン・ミュンヘンで好成績を残し就任したフリック新監督のもと、欧州ネーションズリーグや直近の親善試合での戦績は悪くない。W杯に向けて調子を上げてくるだろう。

カタールW杯組み合わせ抽選会の様子。日本は、ドイツ、コスタリカ、スペインと同組である(REUTERS/AFLO)

 カタールW杯でのドイツの戦績は、今後のワールドサッカーの潮流に関わるので、今大会の注目国の一つである。日本とドイツが対戦するグループリーグの初戦にも注目が集まるのではないか。


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