2024年5月16日(木)

ニュースから学ぶ人口学

2023年4月7日

未婚率における男女の相違

 未婚率の上昇について、男女間で違いのあることにも注意を払う必要がある。各種の調査が明らかにしているのは、男性の場合、年収が高いほど未婚率が低く、年収が低いほど未婚率が高いというわかりやすい傾向である。

 ところが女性の場合は正反対で、年収が高い女性で未婚率が高く、年収が低いほど未婚率は低い傾向にある。その背景には女性労働のあり方に原因があるといってよい。

 男女年齢別に正規雇用と非正雇用とにわけて未婚率を比べると、男性の場合、正規雇用労働者の未婚率はどの年齢別でも非正規雇用よりも低い。これに対して女性の場合、どの年齢階層でも正規雇用の方が独身率は高く、生涯未婚率も正規の方が非正規よりも高い。

 未婚率プロファイルにおける男女の真逆の現象は、女性にとって理想のライフコースである就業と結婚(家事・育児)の両立が困難な状況にあること、男性がもっぱら主たる稼ぎ手としての役割が期待されているのに対して、女性には家計補助的な就業が期待されるという役割分担意識が、(男女ともに)依然、根強いという背景があるのではないだろうか。

 男女間、正規・非正規間の賃金格差や、所得税における配偶者控除制度も男女間のプロファイルの違いを支えている。制度改革とともに、意識改革が必要である。

ライフデザイン教育の提案

 「異次元の少子化対策」のたたき台では、若い人びとの就業や賃金・所得格差の是正については直接、触れられていない。一連の改正労働関係諸法令改正による働き方改革に任されたのだろう。また男女賃金格差についても、女性活躍推進法に関する制度改革に委ねられているのかもしれない。縦割り行政に違いないが、今後に期待したい。

 たたき台には、これから結婚し、出産を控える若者への働きかけも欠けている。安定した雇用、格差のない賃金・所得、働き方改革は、あくまでも条件の改善でしかない。

 大学・大学院で学ぶ学生に対する奨学金の拡充や授業料後払い制度の導入などが検討されているが、意識や行動を促す施策がない。結婚や出産に結びつくためには当事者の意識改革も必要ではないか。

 文部科学省は22年4月に学習指導要領が改訂されて、小学校から高等学校まで、金融教育の学習が必修となった。内容は、生活設計・家計管理、金融・経済の仕組み、消費生活・金融トラブル防止、キャリア教育の4分野にまたがっている。筆者はこれに結婚、出産、育児、介護などを含む人生の過ごし方に関わる「ライフデザイン」を組み合わせることを提案したい。

 高等学校家庭科の指導要領では、第1章として「人の一生と家族・家庭及び福祉」が置かれているが、その内容は主に子どもと高齢者という異世代との触れ合いが中心になっている。どのように一生を送るかについて考えるための情報の提供や議論はない。


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