2024年12月9日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年1月15日

 岸田文雄首相は2023年1月4日の年頭記者会見で、「異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代から『ようやく政府が本気になった』と、思って頂ける構造を実現すべく、大胆に検討を進めてもらいます」と述べた。これに対し、東京都の小池百合子知事は、同日の職員向けの年頭あいさつで、都内の0~18歳の子どもに対し、月5000円程度を給付すると述べた。

(Kaan Sezer/gettyimages)

 岸田首相は、相変わらず「検討」し、小池知事は具体策を明らかにした。検討よりも、具体策にインパクトがあるのは当然だ。異次元の少子化対策で、政権浮揚効果を狙ったのだろうが、その効果は弱まってしまった。また、小池都知事が、所得制限を設けないと明言したのも、違いを際立たせた。

 多くの人が、あらゆる政策に所得制限を設けることが好きなようだが、その手間を考えていない。コロナショックで分かったことは、日本の行政組織は事務処理能力が低いということだったのではないか。そもそも、累進課税で、所得の高い人は所得比例以上の税金を払っている。この還元分と考えれば、所得制限を設けないことは、別に不合理ではない。

 首相は、具体策を考えるスタッフを山のように抱えている。なぜ早急に検討させ、すぐに具体策を提出できないのだろうか。

 岸田首相は、異次元対策の1つ目は、「児童手当など経済的支援の強化」。2つ目は、学童保育や病児保育など「子育てサービスの強化」。3つ目は、育児休業制度をはじめとする「働き方改革の推進など」と説明している。これらを、「本年4月に発足する、こども家庭庁のもとで、子ども政策を体系的に取りまとめたうえで、6月の骨太方針までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する」としている。

 筆者の勘繰りでは、おそらく、予算倍増のための増税をセットで考えているのではないかと思う。増税は急にはできないから、検討するとなってしまうのだろう。しかし、目的は子どもを増やすことなのだから、増税は後で考えれば良いのではないか。

子どもの方程式

 政治的な勘繰りは止めて、どうしたら子どもが生まれるかを考えてみよう。これについて、筆者は、こどもの方程式という概念を提示している。

 その方程式は<子どもの数=子どもを持つ楽しさ÷(子育て費用÷親の所得)>である。

 この式は、子どもを持つ楽しさを一定とすれば、子育て費用が安いほど、親の所得が高いほど、子どもは生まれてくることを示している。

 少子化対策として、子どもを持つ楽しさを高めようという人もいるかもしれないが、どうやったら良いか分からない。また、子どもを持つことは楽しいというイデオロギーの注入で子どもを増やそうという政策に賛同する人もいないと思うので、子どもを持つ楽しさは一定としておこう。すると考えるべきは、子育て費用を下げ、親の所得を上げることである。


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