現在の少子化を引き起こしている最大の原因が、著しい晩婚化と非婚化にあることはよく知られている。2020年の初婚年齢は男性31.0歳、女性29.4歳と近代統計史上、最も遅く、女性は1970年よりも5.2歳も遅くなった。
日本は江戸時代半ばから、ほとんどの男女が生涯に一度は結婚する「皆婚傾向」の強い社会だった。高度経済成長期までその傾向は続いた。
50歳時の未婚者割合(生涯未婚率)を見ると、1970年に男1.7%、女3.3%だったが、80年代から大幅に上昇にして、2020年には男28.3%、女17.8%まで高まった。戦後、最高水準である。
のみならず、生涯未婚率が高い傾向にあるフランスや北欧諸国と同水準になっている。日本はもはや結婚嫌い、子ども嫌いの国になってしまったのだろうか。
変わる女性のライフコースに対応していない政府目標
国立社会保障・人口問題研究所が定期的に実施している「出生動向基本調査」によると、独身女性(18〜34歳)が理想と考えるライフコースは、1987年には「専業主婦」が最も多かった。これに次いで結婚・出産を機にいったん退職し、子育で後に再び仕事に着く「再就職コース」、第3位は結婚して子を持っても仕事を続ける「両立コース」だった。「非婚就業コース」と「DINKsコース(共働きで子どもを持たない)」はごく少数派だった。
2021年調査では大きく変化して、「専業主婦コース」は大幅な減少、「再就職コース」も減少した。これに代わってトップになったのが「両立コース」である。割合では低いものの、「非婚就業コース」「DINKsコース」も上昇し、両者を合わせた子をもつ可能性が低いライフコースが20%に迫っており、「専業主婦コース」を凌ぐ存在になっている。
理想ではなく、現実に予想されるライフコースとなると、もっと悲観的である。結婚しないで仕事を続ける「非婚就業コース」が四半世紀を通して一貫して上昇し、21年調査には33%でトップになった。「両立コース」はこれまで「非婚就業コース」を上回って上昇していたが、15年以後は28%で停滞したままで、21年には第2位に後退した。子育てを重視する「再就職コース」と「専業主婦コース」は大幅に低下した。「DINKsコース」は微増で、5%未満だった。
最新の調査は新型コロナウイルス禍のため、本来予定されていた20年ではなく、1年遅れで行われた。コロナ禍の最中である。
失職や収入減の影響を受けて、将来に対してより悲観的になった可能性がないではない。しかし四半世紀の間に、非婚就業とDINKsを合わせた子を持たないコースを予想する者が増え続けて、4割近くにも達したことは驚異である。今後も出生率がさらに低下すると予想せざるを得ない。
政府は国民の「希望出生率」として1.8を掲げて、この水準まで出生率を回復することを目指している。これは9割の女性が結婚して、子ども2人を持つことによって実現される。もし予想通り4割の女性が未婚かDINKsのコースを選ぶとすると、結婚した人々は平均して3人は産まなくてはならないのだ。壁は一段と厚くなる可能性がある。