2024年大統領選挙ほど、副大統領候補の重要性について議論された選挙はないだろう。今回の大統領選挙は、民主党で現職のジョー・バイデンと、共和党で前職のドナルド・トランプの再対決になる、と多くの人が信じてきた。だが、6月に行われた第一回討論会でバイデンの年齢問題に焦点が当たり、果たしてバイデンで戦えるのか? という懸念が民主党内で生じるようになった。
予備選挙で選ばれた候補であるバイデン=カマラ・ハリスのチケットを他の候補に置き換えるのは容易ではない。仮に交代となると、バイデン=ハリスのコンビ用に集めた献金の返却問題が発生する。返却せずにそのまま利用できる道は、ハリスが大統領候補を引き継ぐことである。また、仮にバイデンが大統領選を継続して勝利し就任したとしても、不測の事態が発生して副大統領が昇格する可能性は、これまでの大統領と比べても高いといわれている。
一方の共和党のトランプは、7月15日から18日にかけてウィスコンシン州ミルウォーキーで行われる党大会で、オハイオ州選出の上院議員で、ベストセラーとなった『ヒルビリーエレジー』(光文社)の筆者でもあるJ・D・バンスを選出した。トランプもバイデンの81歳と比べれば若いものの77歳と高齢であり、不測の事態が発生する危険性は例年より高いと考えられる。
大統領に不測の事態が発生した場合に昇格するのは、副大統領である。万が一大統領と副大統領にそろって不測の事態が生じた場合は下院議長が継承者となる。その後は、閣僚の中で歴史の古い順(国務長官が最初で国土安全保障省長官が最後)で継承順位が決まる。
大統領による一般教書演説などの際に閣僚のうち一人が別室待機になるのは、継承可能性のある人が全員死亡してしまう事態を避けるためである。それはさておき、大統領継承順位一位の副大統領とは、どのような職なのだろうか。本記事では憲法の規定とこれまでの歴史を簡単に振り返ることにしたい。