2024年12月10日(火)

キーワードから学ぶアメリカ

2023年8月26日

 2023年8月23日に、2024年米国大統領選挙を目指す共和党候補による第一回討論会が実施された。一定数の献金者が存在すること、世論調査で少なくとも1%以上の支持率を獲得していることなどの参加条件を満たしたと主張する人物は10人以上いたが、共和党全国委員会が認めたのは9人(前大統領のドナルド・トランプ、フロリダ州知事のロン・デサンティス、投資家のビベク・ラマスワミ、前副大統領のマイク・ペンス、元国連大使のニッキー・ヘイリー、サウスカロライナ州選出の連邦上院議員であるティム・スコット、前ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ、ノースダコタ州知事のダグ・バーガム、前アーカンソー州知事のエイサ・ハッチンソン)であり、トランプを除く8人が参加した。

(写真:AP/アフロ ) 写真を拡大

 日本の読者にとっては、党の大統領候補を決定するために予備選挙が行われ、そのために公開討論会も催されるというのは驚きだろう。他の多くの国では一定の金額を納入するなどして入党し、日本で時に「雑巾がけ」と呼ばれるような経験をした上で重要選挙に臨むのが一般的である。だが米国の場合は、自らが党の候補となることを目指すと宣言してしまえば、候補になりうる。

 例えばトランプは、若い頃は民主党に有権者登録して民主党候補に多額の献金を行っていたし、改革党から大統領になることを目指して立候補したこともある。その彼が共和党に党籍を変更して16年には大統領候補になったのである。

 トランプは言動の派手さやスキャンダルに加えて、それまでの典型的な共和党の政治家と政治的立場が異なっていたため、党の主流派は彼を阻止しようとした。だがトランプが予備選挙を勝ち抜いて党内で影響力を強めた結果、今日の共和党はトランプ党となったと指摘する人もいる。

 米国の場合、党内に多様な見解が存在するのは当然とされる。大統領のみならず連邦議会議員の選挙に際しても、選挙区ごとに実施される予備選挙で勝利した人物が党の候補となるため、各選挙区の特性に適った候補が選出されるからだ。

 政党綱領に基づいて党本部が候補者を指名するような国とは異なり、米国の二大政党は、予備選挙で勝利した人々の寄り合い所帯なのである。また、米国の政党は利益集団の集合体としての性格も持っている。

 比例代表制を採用する国とは違い、小選挙区制が採用されている米国では、環境保護を重視する緑の党などが議席を獲得するのは困難である。そのため、自らの利益関心の実現を目指す人々は政党でなく利益集団を作って政治家や裁判所に働きかける傾向が強い。米国の二大政党の特徴は、どのような利益集団と提携関係に立っているかで説明できるのだ。

共和党とは?

 共和党とは一体どのような政党なのだろうか。


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