2024年7月14日(日)

キーワードから学ぶアメリカ

2023年7月3日

 2023年6月に、米国で連邦議会下院の選挙区割りに関する重要な判例が2つ出された。

 米国の選挙区割りに関してはゲリマンダリング(ゲリマンダー)という表現を聞いたことがあるかもしれない。連邦議会下院の選挙区割りは州ごとに行われるが、州議会で優位に立つ政党が自党に有利になるよう恣意的に区割りを行うことをゲリマンダリングという。

米国でも、議員の「区割り」について住民運動が展開されている(The Washington Post /gettyimages)

 1812年にマサチューセッツ州のエルブリッジ・ゲリー州知事が行った選挙区割りの形がサラマンダー(小さなトカゲのような形の西洋の伝説上の生き物。火の中に住む妖精ともいわれる)に似ていたことから、ゲリーのサラマンダーという意味でゲリマンダー、ゲリマンダリングと言われるようになったのである。

 米国下院の選挙区割りの問題と聞いて、日本ではいわゆる「一票の格差」の問題が存在するが、米国の場合はどうなのだろうか? 州政府は本当に好き勝手に選挙区割りを行ってよいのだろうか? という2点を疑問に思う人も多いのではないだろうか。本記事ではこれらの点について解説することにしたい。

米国の選挙は民主的なのか?

 日本では選挙のたびに「一票の格差」の問題が指摘される。同一の選挙で選挙区ごとに有権者数が異なり当選に必要な票数が変わることから、一票の価値に違いが発生するためである。

 この点に関連して、日本では、米国の下院議員選挙は一票の格差が存在しないために民主的だと報道されることがある。それはある意味正しく、ある意味では誤っている。

 連邦議会下院の選挙は全て小選挙区制で行われる。下院の定員435人は人口に応じて各州に割り当てられ、10年ごとの国勢調査を踏まえて一票の格差が発生しないように州ごとに選挙区割りが行われる。この説明を見ると、米国では一票の格差の問題が発生せず民主的だと思う人がいても不思議ではない。

 だが、詳細に検討すると、米国の仕組みにも不平等な点が存在する。まず、全ての議席が州ごとに分配されるということは、プエルトリコやグアム、ワシントンDCなど、いずれの州にも属さない地域(非州地域)の住民は正式な議員を出すことができない。

 また、米国には日本式の住民票が存在せず、国勢調査の結果に基づいて選挙区割りが行われることによる問題もある。国勢調査には米国籍を持たない留学生や海外から来た労働者も回答していて、そこでは国籍も投票権の有無も問われないため、実際に投票権を持つ国民以上の人数がカウントされている。その結果、留学生や外国人労働者が多い州は他州と比べて、また、それらの人が多い地域は他の地域と比べて、実質的に一票の価値が高くなる。

 さらには、どの州にも最低1議席が割り当てられることになっていることも、実質的な差を生み出す。例えばモンタナ州とサウスダコタ州はともに下院議員の議席数は1ずつだが、両州の人口は相当異なっている。このように、米国でも一票の価値が全く同じというわけではない。


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