裁判所判事選びが二大政党勢力争いに影響
また、この判決に反対意見を出した連邦最高裁判所判事はクラレンス・トマス、サミュエル・アリト、ニール・ゴーサッチという保守派判事3人のみで、リベラル派判事は判決に賛同している。そして、バラク・オバマ元大統領など民主党の有力者も同判決を支持しているが、この判決が民主党を利するというわけではない。例えばニューヨーク州のように民主党が優勢な州では、民主党に有利なゲリマンダリングが行われているという批判もなされており、その是非が州の裁判所によって判断されることになるからである。
これらの点を踏まえれば、この判決は、選挙区割りに関して州の裁判所が持つ権力を大幅に増大したものといえるだろう。これがどちらの党派を利することになるかを判断するのは難しい。
米国の州の裁判所は、連邦の裁判所以上に党派性が強い。州の裁判所の判事の任命方法は州により異なるが、50州のうち39州が少なくとも一部の判事を選挙で選出している。州知事による任命制も多くの州で導入されている。州の裁判所判事の選挙結果は州議会選挙の結果と類似している場合が多いため、大半の州では州議会が行った選挙区割りが州裁判所によって追認されることになるだろう。
だが、二大政党の勢力が均衡している州で、州議会の多数派と州裁判所の多数派にズレがある場合は、区割りの妥当性をめぐって大問題になる可能性がある。そのような可能性を念頭において、今後は二大政党と各種利益集団が州の裁判所判事を選ぶ選挙をより重視するようになる可能性も高いだろう。
以上のように、選挙区割りを見るだけでも、米国政治の特殊性を理解することができるだろう。
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