第26回参議院議員通常選挙が7月10日に実施された。2018年に行われた定数是正により、埼玉選挙区の改選数が1議席増加し、比例区の改選数2議席増加する措置が適用され、参議院の定数は248となっていた。
参議院議員の任期は6年で解散がないため、半数ずつ3年おきに改選されている。今回の参議院選挙では、選挙区・比例区合わせて124議席(248の半分、神奈川県の補欠補充分1議席除く)が改選され議席が確定した。
ところが、選挙の実施された翌日の7月11日に、弁護士グループが今回の選挙が1票の格差が3倍を超えた状態で実施されたことは違憲であるとして、選挙の無効(やり直し)を求めて全国14カ所の高等裁判所等に提訴した。これらを背景に今回は、都市と地方の1票の格差を形式・実質の2つの側面から考えるものとする。
1票の格差とは
今回問題となっている1票の格差とは、議員1人を選出するにあたって、有権者が何人であるかという比率に起因するものである。
わかりやすい例として、仮に議員定数が同じ1人の選挙区A、Bが存在し、選挙区Aの有権者数が100万人、選挙区Bの有権者数が10万人であったとする。極端なケースとして、有権者の過半数の得票を得れば、必ず当選できるとすると、選挙区Aでは50万票が必要であるのに対し、選挙区Bでは、その10分の1の5万票を得れば当選できてしまうことになる。逆に言うと選挙区Bの有権者は5万人で1人の代表を国会に送り込むことができるのに、選挙区Aの有権者その10倍の有権者の票が必要であることになる。このことから、選挙区Aのように定数に対して有権者が多い選挙区(大都市のある地域)は、1票の重みが小さく、制度上で1票の価値に格差があることになる。
そこで、法の下の平等を謳(うた)った憲法に従えば、このような1票の重みに格差が生じることは許されないという考え方になる。特に、選挙を通じた参政権は民主主義の根幹ともいえる権利であるため、これまでしばしば選挙の無効を主張する訴えがなされた。
1票の重みに関して、おおむね2倍を大きく超えて格差があることが問題であるとされている。ただし、各地の高等裁判所レベルでの判決では、格差が2倍前後であっても「合憲」である、または「違憲状態」ではあるが、選挙のやり直しまでは命じないという判決などばらつきがある。