2022年10月7日(金)

都市vs地方 

2022年7月28日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 国会側も議員定数の是正を通じて、1票の価値の格差緩和に努めている。先ごろ話題になったいわゆる衆議院小選挙区の「10増10減」の区割り案は、都市部を中心に議席を割り当て、地方部を中心に議席を減ずることで、バランスをとろうとした結果である。

 この結果、表1に示す通り、この区割り案が実施された場合には、1票の格差は1.999倍とかろうじて2倍以内におさまる結果となっている。

(出所)衆議院議員選挙区画定審議会(2022)「衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告」参考資料 写真を拡大

今回の参院選での格差の実態

 さて、表1に挙げた区割りは現時点では区割り案であり、実施されれば1票の価値の格差は2倍以内におさまるとみこまれるものの、まだ実施されているわけではない。また、実施された場合でも、1.999倍の格差が存在し、法の下の完全平等というわけでもない。

 そこで、まずは今回の参議院選挙がどのような状況で実施されたかをみるため、全国の地方ごとの選挙区の定数と有権者数のデータを用いて、1票の重みの格差を確認することとする。表2には7月参議院実施時の各選挙区の議員定数と有権者数から算出した1票の重みとその格差である。

(出所)総務省(2022)「令和4年7月10日執行 参議院議員通常選挙 速報結果」2.(2)-1 「都道府県別有権者数、投票者数、投票率(選挙区)」および、3.(2)「都道府県別党派別新現元別当選人数(選挙区)」より筆者作成 (注)Z=(X/Y)×100万、Wは各選挙区のZを全国の最小値のZで除したもの。補欠選挙の行われた神奈川選挙区の定数は元来の定数4として算出。在外投票は除く 写真を拡大

 これを見ると、計算上で1票の重みが最も小さい神奈川選挙区と最も大きい福井選挙区では3倍以上の開きがあることが分かる。冒頭に紹介した弁護士グループの違憲提訴もこの開きを問題にしていると思われる。

 この計算結果を前提とすれば、神奈川県の有権者は国勢に1人の代表を送り込むために、福井県の有権者3倍を超える票を必要とすることになる。

投票率を考慮した「もう一つの格差」

 表2に試算した1票の重みの格差は、定数と有権者数との比率に基づいて算出されたものである。これは、選挙が行われる前の参政権における公平性を企図したものとして解釈できる。

 しかし、ここでもう一つ別の観点から、1票の重みの格差を考えてみたい。表2のケースであれ、冒頭に紹介した地域A(100万人)と地域B(10万人)の例であれ、議員1人を選出するにあたっての1票の重みの格差は、「有権者数」を基準として計算されていた。すなわち、割り当てられた議席を「すべての有権者が投票を行った場合の票数」で割って求められたものである。したがって、ある意味では投票率が100%となった場合の数値を前提とした指標といえる。

 しかし、実際には投票率は100%ではないため、1議席を選ぶために実質的に行使された票数は投票率によって左右されることになる。例えば、冒頭の例で地域Aの投票率が10%、地域Bの投票率が50%とすると、有権者の比ではA:B=100万:10万=10対1であるが、事後的な票数の比では、A:B=10万:5万=2対1と大幅にその格差は小さくなる。逆に、地域Aの投票率が50%、地域Bの投票率が20%とすると、A:B=50万:2万=25:1とさらに格差が拡大してしまう。

 そこで、今回の参議院選挙の都道府県別の実際の投票者数を基準とした、「事後的な1票の重み」を試算してみよう。

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