日本の世代間格差は世界の中でも深刻であり、かねてから世代間格差の一刻も早い是正の必要性は指摘されてはいるものの、実際には遅々として進んでいない。
世代間格差の是正を阻むシルバー・デモクラシー
こうした世代間格差の是正を阻むメカニズムに関する有力な仮説がシルバー・デモクラシー仮説である。近年の日本では、少子化、高齢化の進行と、若年世代の低投票率と高齢世代の高投票率とが、相乗的に高齢世代の政治的プレゼンスを強める方向で作用することとなっている。高齢世代に有利な政策が採用されやすくなったり、あるいは高齢世代に不利な改革は採用されにくくなるという、いわゆる高齢者重視の政治(シルバー・デモクラシー)が指摘されている。
シルバー・デモクラシーが問題視されるとすれば、今後より一層の少子化と高齢化の進行が見込まれる中で、自らの受益を重視する高齢世代が、政治・政策決定過程を介して、勤労世代に加重な負担を課す懸念が強まることにあるだろう。
世代別の生涯純負担額と第49回衆議院議員総選挙(2021年実施)における年代別投票率の関係を見ると、概ね世代別投票率と負の相関関係があること、つまり、投票率が高い高齢世代ほど生涯純負担額が小さく、投票率が低い若者世代ほど生涯純負担額が大きいことが確認できる(図1)。