2022年12月2日(金)

#財政危機と闘います

2022年6月16日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 さらに、若者世代(18歳以上39歳以下)と中年世代(40歳以上64歳以下)と高齢世代との投票率の差と生涯純負担の差額との関係を推計したところ、下記の回帰式が得られた。

若者世代:生涯純負担額の差=1515.2-44.035×投票率の差
中年世代:生涯純負担額の差=935.6-17.834×投票率の差

 つまり、若者世代では、投票率が高齢世代より1%低いことで政治から不利に扱われ、1%当たり生涯で44万円ほど高齢世代より「損」をしていること、中年世代は同様に18万円弱「損」をしていることが分かる。

 また、各世代一人当たり年額の選挙棄権のコストを、(高齢世代の投票率-ある世代の投票率)×44.035(17.834)÷(平均寿命までの余命期間)という式を用いて求めると、10代12.4万円、20代17.5万円、30代12.7万円、40代2.7万円、50代0.3万円となった。これは、投票権を行使しないことによって失っている便益であり、コストである。若い世代ほど選挙棄権のコストが大きくなる傾向にあることが分かる。民主主義の全員参加の原則に立ち返って考えてみると、この選挙棄権のコストとは、選挙に参加すべきものが参加しなかったことに対する「罰金」と解釈することもできる。

シルバー・デモクラシーの代償

 若者が選挙を棄権することで、日本のシルバー・デモクラシーは猛威を増している。シルバー・デモクラシーは、現役世代の負担を重くすることで経済成長を停滞させ、また、若者から結婚の機会を奪うことで少子化を加速させるなど、日本経済・社会全体にとってもマイナスであることを指摘しておきたい。

 現役世代の社会保障に伴う負担に関してみれば、今から40年前のいわゆる団塊の世代が30歳になった1979年と2019年とで比較すると、保険料負担は個人では5倍、企業では4.1倍、さらに税負担(公費負担)は5.2倍となる一方、賃金は1.5倍にしかなっていない。団塊の世代に比べて現在の現役世代は激烈な負担を負わされていることが分かる。

 また、企業は人件費負担を減らすため、雇用の非正規化を推し進めるなど、雇用の不安定化が進行し、若者は結婚したくても結婚できない状況下に置かれ、婚姻数も低下している。具体的には、団塊の世代が結婚適齢期(20代前半)だった1970年代前半では婚姻率は10‰ほどだったのに対して2019年では4.8‰と半分にも満たない。

 つまり、今の若者は団塊の世代に比べて半分も結婚できていないと言える。日本の場合、婚姻は出生の前提となるので、当然、少子化も同時に進行しているのは周知のとおりだ。

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