困ったさん:直近の国政選挙である、2019年7月の第25回参議院議員通常選挙では、20歳代の投票率が30.96%と、世代間で最も低い水準でした(全世代投票率48.8%)。
より多くの世代の意見を政治に反映するためにも、未来の社会を担う若者世代にこそ投票所まで足を運んでもらいたいのですが……。
佐々木先生:たしかに、日本の若者には「投票に行くことが当たり前」という考え方があまり根付いていないですよね。子どもの頃から大人になるまで、日常生活の中で政治的な話を交わす習慣が少ないので、周りの友人・知人が投票に行っているのかどうかもよく知らないのかもしれません。
困ったさん:そのような状況で、テレビやSNSで「若者の投票率が低い」というニュースなどを目にすれば、「自分も別に行かなくてもいいか」と思ってしまうんじゃないでしょうか。
佐々木先生:逆に言えば、全体の投票率では低くても、「実は同世代でこれだけもの人々が投票している」と、人数の情報などを使って量感をうまく伝えることで、自分も投票に行こうと思いやすくなる可能性があります。
人には、他者と同じ行動を取っていると安心する性質があります。周囲に対する認識を「投票に行っていない」から「行っている人も多い」に転換する工夫が必要です。
困ったさん:低い投票率を責めることなく、共に投票しようと誘うわけですね。
佐々木先生:その通りです。米国の研究では、近所の人たちの過去の投票行動を事前に知らせたグループで、その次の選挙の投票率が8.1%ポイント上昇したと報告されています。
この工夫はなかなか強烈ですが、匿名性を担保し、同調圧力のような負担を有権者にかけていないかに配慮しながら、地域の人々や同世代の人々の投票行動をうまく可視化することの検討は大事でしょう。
困ったさん:まさにわれわれ自治体職員の役割ですね! さっそく広報と連携して、発信の仕方を工夫してみます。
佐々木先生:素晴らしいです。このような他者に関する情報提供は、省エネの促進や税金未納の防止にも効果があることが知られています。その他の分野にも活用できるかどうか、ぜひ検討してみてください。
「選挙に行くことは国民として当然の行為だ」という意見がある。だが、社会のために自分の時間を割く行動に対して、きちんと感謝の意を伝えることも大切だろう。
米国のある研究では、過去の選挙での投票に対して「ありがとう」と伝えることで、次の選挙の投票率が3.1%ポイント上昇したと報告されている。
「批判」よりも「感謝」が人を動かす。『北風と太陽』の寓話に倣うべきだろう。
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