2022年7月10日の参議院選挙は将来、戦後政治史に記録されるかもしれない。それは、憲法改正プロセスの里程標として、である。
今回の参議院選挙を経て、改憲に前向きな4政党(自民党、公明党、維新の会、国民民主党。以降、「改憲勢力」とする)の議席数は、非改選分も含めて177議席となった。これは参議院の総議席数248の3分の2(166議席)を上回り、改選前の166議席(総議席数は245)と比較すれば決して小さくない変化だ。
もちろん改憲勢力4党の憲法改正に対する方針・争点は一枚岩ではないどころか、隔たりは大きく、政党内の合意形成も容易ではない。しかし単純計算とはいえ、憲法改正を志向する政治勢力が衆議院で約4分の3、参議院で3分の2以上を維持した意味は大きい。
衆議院の解散や大きな政界再編がなければ、国会の勢力図は25年夏まで維持される。こうした状況を踏まえ、岸田文雄首相は参院選開票後の選挙特番で「できるだけ早く発議をし、国民投票に結びつけていく」と語った。
また21年6月、通常国会で成立した改正国民投票法では、国民投票の公正や公平の確保のための追加検討事項が明記された(附則第四条)。具体的には国民投票に関わるインターネット利活用、広告、資金に関する制度的措置を改正法施行3年(24年9月)目途に検討・整備することを求めている。 こうした観点でも「(約)3年間」という時間軸が意味を持つ。
今後、憲法改正そのものと改正手続きの両面で、議論が加速化するのは間違いないだろう。
原則、自由の「国民投票活動」
憲法改正に係る国民投票とはどのようなプロセスか。義務教育課程で学ぶ憲法改正の発議と承認プロセスは次の通りだ。
国民投票法等はこのプロセスをさらに具体化する。現行の想定では、国民投票は、国会の発議から60日以後から180日以内に実施され、満18歳以上の日本国民が投票権を有するとされる。
発議の内容は関連するテーマごとに区分して国会で審査され、国民は国民投票においてもそれぞれ別個に票を投じる。つまり憲法改正案をワンパッケージで審議・投票するのではなく、関連テーマごと(例えば、9条関連、新しい権利の明文化、緊急事態条項など)に判断するということだ。