2023年2月7日に、米国のジョー・バイデン大統領が一般教書演説を行い、「この2年で1200万人もの創出した」などと政策の成果を強調し、中国に対しては「アメリカと世界の利益をもたらすのであれば協力する。だが、われわれの主権を脅かすならば、行動する」と述べた。一般教書(State of the Union Address)は、予算教書(Budget Message of the President)、大統領経済報告(Economic Report of the President)と並んで三大教書と呼ばれるものの一つだが、一般教書はどのようなもので、なぜ必要なのだろうか。
一般教書演説=日本の施政方針演説?
合衆国憲法は、大統領は連邦議会に対して、随時、連邦の状況(state of the union)に関する情報を提供しなければならないと定めている。この規定に基づいて行われるのが一般教書演説である。
一般教書演説は、正副大統領だけでなく、連邦議会上下両院の(ほぼ)全議員、連邦最高裁判所判事、閣僚、統合参謀本部の将官という、三権と軍の重要人物が一堂に会する珍しい機会だ。ただ、演説が行われる議事堂が爆破されて重要人物が全滅し、政府が機能しなくなる事態を避けるために、上院仮議長(副大統領、下院議長に次ぐ第3順位の大統領継承権を持つ)と、閣僚1人、最近では上下両院の議員各党1人ずつが指定生存者として別の場所で待機する慣行がある。この参加者リストを見ても、一般教書演説が重要なイベントであることがわかるだろう。
日本のメディアの報道で時折、「米国の一般教書演説とは日本の施政方針演説に当たるものだ」という説明がされることがある。だが、これには一定の留保が必要だ。日本で採用している議院内閣制と、米国で採用している大統領制の制度上の違いが両者の意味付けを異なるものとしているからだ。
議院内閣制を採用する日本では、行政部の長は議会(国会)によって選出される。そのため、議会の多数派と首相の所属政党が一致している(与党と呼ばれる)し、首相も国会議員である。したがって、首相が1年間の政府の基本方針として発表する施政方針演説の内容は、議会に法案として提出されるだけでなく、議会多数派によって実現されるのが当然視されている。
これに対して米国では、一般教書演説で表明された内容がそのまま法律として実現されるとは限らない。そもそも、その内容の法案が提出されるかも怪しいのだ。