米ジョージア州フルトン郡大陪審はこのほど、2020年大統領選挙関連でトランプ前大統領と側近グループ18人を、マフィアの大掛かりな組織犯罪に見立て「恐喝・捏造・窃取・共謀」など41の罪状で起訴した。その深刻さと特異性にトランプ陣営の間でも動揺と衝撃が広がっている。
見逃してはいけない起訴状の2つのワード
トランプ氏はこれまでに①ニューヨーク地検による不倫もみ消し事件捜査、②フロリダ連邦地検による秘密公文書秘匿事件捜査、③司法省特別検察官による20年大統領選挙不正介入事件捜査――の3件でそれぞれ起訴されてきた。
しかし、今回4回目の起訴は、過去3回とくらべ、内容、規模、深刻度において際立った特徴がある。すなわち、ジョージア州検察局で捜査を指揮してきたファニ・ウィリス女性検事が当初から、トランプ氏をマフィアの組織犯罪並みの〝首領〟と位置づけ、指揮下の側近グループとの共謀により、大統領選挙結果について大規模な転覆工作を企てたと断じた点にある。
そして去る14日夜、トランプ氏のほか、一網打尽に正式起訴された共謀者の中には、元ニューヨーク市長でトランプ大統領の個人弁護士だったルドルフ・ジュリアーニ、同大統領の首席補佐官だったマーク・メドウズ、当時司法次官補で司法長官就任もうわさされたジェフリー・クラーク各被告ら重要人物も含まれている。
さらに、公表された起訴状(全文98ページ)の中に、過去3回の起訴状にはなかった重要な「キーワード」が何度か登場する点も見逃せない。それが、「enterprise」と「organization」という2つの特殊用語だ。
今回、検察側が捜査対象にした「enterprise」は、単なる事業や企業の意味ではなく、マフィア摘発などでしばしば登場する「リスクをともなう大がかりな企て」であり、「organization」はその目的達成のために「周到に結成された一団」を意味している。
起訴状はまず、41項目におよぶ「罪状」の中で最も重きをなす第1項目で、トランプ氏ら19人の名前を列挙した上で、マフィアなどの組織的犯罪摘発目的で1970年制定された州法「RICO(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations)」法に違反したと説明。具体的に「トランプらは、大統領選挙での敗北を認めず、選挙結果をトランプへ有利に変更させるために意図的に共謀した。この共謀行為は、ジョージア州フルトン郡、および他州において2件以上の恐喝活動を引き起こす共通の計画と目的を包含していた」と述べた。
そして、こうした大がかりな犯行を「enterprise」と定義し、計画を実行に移すためのトランプ被告らのグループをひとまとめにして「organization=一団」と位置付けた。