2024年7月16日(火)

BBC News

2024年7月16日

バーンド・デブスマン・ジュニア(ペンシルヴェニア)、ナディーン・ユーシフ、BBCニュース

米東部ペンシルヴェニア州で13日、ドナルド・トランプ前米大統領が支援者集会での演説中に撃たれる暗殺未遂が起きた。会場の警備を担当していた警官や警護担当は、なぜ銃撃犯にあれほどの接近を許してしまったのか、疑問が渦巻いている。

トマス・マシュー・クルックス容疑者(20)は、集会が開かれていたペンシルヴェニア州バトラーで、野外イベント会場に近い建物の屋上へたどり着き、そこから130メートル先にいたトランプ前大統領に向けて発砲した。

警護担当のシークレットサービスはその後、この建物の警備を地元警察に任せていたことを明らかにした。

この事件では集会参加者の1人が死亡し、2人が重傷を負った。トランプ氏は右耳を負傷した。

シークレットサービスのアンソニー・グリエルミ報道官は、自分たちは地元警察の援護を頼りにしていたと述べた。

同報道官によると、シークレットサービスはイベント会場に設置された集会現場内の安全確保を担当し、地元警察はこの民間の建物を含む周辺エリアの安全確保を担当していた。

地元警察の報道官はBBCに対し、シークレットサービスから警備のため要請された「すべてのリソース」を提供したと語った。これには30~40人の警官が含まれる。

どのように警備計画が破綻(はたん)し、銃撃犯が妨害を受けることなくトランプ前大統領に接近できたのか。多くの観測筋は疑問視している。

会場にいた人たちは、銃撃が始まる数分前の時点で、建物の屋根の上に容疑者がいることに気がついたと話している。バトラー郡のマイケル・スルーピ保安官は、地元の警備担当も男を発見したが、犯行を止められなかったと述べた。

同保安官は集会会場内の安全を確保するうえで「失敗」があったことを認めつつ、誰か一人やひとつの組織が非難されるべきではないと考えていると述べた。

情報伝達に「10秒かかる」、屋上警備のぜい弱性は

集会での安全を確保するためにシークレットサービスが地元警察の助けを借りるのは一般的なことだと、米警備コンサルタント会社「セキュア・エンバイロメンツ・コンサルタンツ」設立者のジェイソン・ラッセル氏は言う。ラッセル氏は2002年~2010年まで、シークレットサービスのエージェントとして働いていた。

「シークレットサービスには、どこにでも配置できるエージェントが無限にいるわけではない」と、ラッセル氏はBBCに語った。

同組織のエージェントは通常、選挙イベントの数日前に会場を詳しく調べ、警備計画を立て、それを地元警察と共有するという。

今回の場合、銃撃犯がいた建物はイベント公式会場の外にあり、地元警察が警備を担っていた場所だったと、ラッセル氏は述べた。

イベント開催中のやり取りは、関係する全ての機関に共有されるという。

しかし、こうした情報が流れるのには「10秒」かかるといい、銃撃犯が数発発砲するには十分な時間だと、ラッセル氏は付け加えた。

米NBCニュースは、シークレットサービスの動きに詳しい情報筋2人の話として、イベント開催前から、屋上警備のぜい弱性が指摘されていたと伝えた。

シークレットサービスのエージェントは、当該の建物を脅威として事前に認識し、近くに警官を配置して人の立ち入りを防ぐよう地元当局に要請していた可能性があると、ラッセル氏は述べた。

「理由はどうであれ、それは実現しなかった」と、同氏は続けた。

現場を目撃した1人のトマス・グリーソン氏は、「長距離からの脅威に対しては、もっと厳重な警備が必要だった」と述べた。グリーソン氏は21年間にわたり、米陸軍の空挺部隊とレンジャー部隊の一員だったという。

「この距離と、見晴らしの利く場所だったことを考えると、(トランプ前大統領を)暗殺しようとする場合にあの場所が最も理に適った狙撃地点だったといえる」

FBIが捜査指揮、上下両院でも調査

米連邦捜査局(FBI)が事件の捜査を指揮している。この事件は現在、米上下両院によるいくつかの調査の対象にもなっている。

アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は、警備上の「失敗」であり、「このような事案は二度と起こってはならない」と米CNNに述べた。

シークレットサービスのキンバリー・チートル長官は15日、同組織は「何が起こったのか、それがどのように起こったのか、そしてこのような事案が再び起こらないようにするにはどうすればいいのかを理解」するために、連邦警察および地元警察と連携していると述べた。

また、銃撃事件について議会のあらゆる調査に協力すると付け加えた。

チートル長官は22日に開かれる下院の監視・説明責任委員会の公聴会に出席する予定。

同委員会の共和党議員はまた、シークレットサービスに対し、内部通信記録や音声・動画記録、地元の法執行機関へのメッセージ、地図や図表、イベントに向けた事前評価などの証拠を提出するよう求めている。

(英語記事 Security was tight, so how did Trump gunman slip through?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx0247zyed3o


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