2024年12月14日(土)

MANGAの道は世界に通ず

2023年1月28日

 「異世界転生」というジャンルをご存知だろうか。平凡だった主人公が、交通事故などで命を落とし、記憶を保ったまま違う世界に生まれ変わり、大活躍するというのが基本的なストーリーだ。

 明確な起源は定かでないが、「ライトノベル」が流行し始めた2000年代にヒットした、『ソードーアートオンライン(SAO)』(川原礫)がパイオニアといわれている。

 その後インターネットの普及とともに、素人ユーザーが小説を投稿する「小説家になろう」というウェブサイトが成長。同サイト内で投稿・閲覧される作品として、この「異世界転生」というジャンルが急成長したというのが大枠の歴史だ。

 このジャンルが人気となった背景にあるのは、1990年代のバブル崩壊以降の空虚感だ。現代社会に希望が見出せず、今の延長に輝かしい未来がない。努力をする意義が感じられない。

 だからこそ、「一度生まれ変わって、最強のステータスを持った上、大きな努力はせずに華々しい生活を送りたい」という若者の潜在願望に刺さり、大ヒットしたというわけだ。

『無職転生~異世界行ったら本気だす~(フジカワユカ、理不尽な孫の手、シロタカ、KADOKAWA)

 さて、この「小説家になろう」というサイト上で史上1〜2位を誇る閲覧数を誇り、アニメ化も実現し大ヒットしたのが、『無職転生~異世界行ったら本気だす~(フジカワユカ、理不尽な孫の手、シロタカ、KADOKAWA)という作品だ。

 34歳職歴無し、無職のニート生活を送っていた主人公が、トラックに轢かれて死んでしまう。目覚めた時には異世界で、とんでもない才能を秘めた赤ん坊として生まれていた、というストーリーである。

 本作は2012年11月に投稿が開始され、ここから一気に同ジャンルの投稿作が増えたことを考えると、まさにこの異世界転生分野の「定型」を作った作品だと考えられる。

 剣と魔法で成り上がる、典型的な異世界ファンタジーの姿が描かれており、このジャンルの具体的イメージをつかむには、本作がもっとも手っ取り早いと思われる。

 一夫多妻がそれとなく認められていたりなど、甚だ都合の良い設定が散りばめられていることも特徴だ。現代の若者の心理的渇望をつかんでいただくため、ぜひ一度手に取ってみてはいかがだろうか。


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