延長の末、PK戦でクロアチア代表に敗れるも、ドイツ戦とスペイン戦で2度の奇跡を起こし、W杯決勝トーナメント進出を果たした日本代表。強豪チームとの実力差をチーム戦術でカバーし〝ジャイアント・キリング〟を果たすその姿に鼓舞された国民は多いはずだ。そして、海外選手との体格差を埋めるために常に「思考し続ける」日本選手たちの姿は、 コミックス累計1600万部を突破した国民的人気サッカー漫画『アオアシ』(小学館)主人公・青井葦人選手のプレースタイルに通じるものがある。
『Wedge』本誌連載『MANGAの道は世界に通ず』の筆者で、コンテンツビジネスを手掛ける経営者でもある保手濱彰人氏が、企画発案者・荻野克展氏と現編集者・今野真吾氏の2人に聞く。(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)
『Wedge』本誌連載『MANGAの道は世界に通ず』の筆者で、コンテンツビジネスを手掛ける経営者でもある保手濱彰人氏が、企画発案者・荻野克展氏と現編集者・今野真吾氏の2人に聞く。(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)
保手濱 弊社では日本のキャラクターを世界に発信するビジネスを手掛けており、私自身も幼少期から現在に至るまで漫画に夢中なことから、今も月100冊以上を読んでいる。その中でも『アオアシ』は本当に大好きな作品の一つだ。
荻野さんが企画を立ち上げ、漫画家・小林有吾氏に話を持ち掛けたと伺ったが、連載開始前にどのような構想があったのか。
荻野 『ビッグコミックスピリッツ』編集部に在籍当時、いつかサッカー漫画を雑誌の柱としたいと考えていた。メジャースポーツを扱った作品はヒットしやすく、特にサッカーは国内外問わず人気の競技だったからだ。
ただし『キャプテン翼』(集英社)や『GIANT KILLING』(講談社)など、これまでの名作とは異なる新たな切り口で、かつ、われわれ青年誌の読者層である20代~40代にも響くものでないと広まらない。考え抜いた末にたどり着いたのが「育成」というコンセプトだった。
今野 『アオアシ』の主人公・葦人が所属するのはJリーグチームの下部組織であるJユース。彼らは高校生でありながら、プロの世界を目指してプレーする。本作品では成長する主人公たちの視点だけでなく、監督やコーチなど、彼らを育成する大人目線の思考や葛藤なども描かれている。クラブチームの選手や監督たちへの生の取材を通じてリアリティーを持たせ、育成する側・される側双方の視点を織り交ぜつつストーリーが進行していくところが、本作品の特徴だ。