『Wedge』本誌連載『MANGAの道は世界に通ず』の筆者で、コンテンツビジネスを手掛ける経営者でもある保手濱彰人氏が、企画発案者・荻野克展氏と現編集者・今野真吾氏の2人に聞く。(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)
保手濱 弊社では日本のキャラクターを世界に発信するビジネスを手掛けており、私自身も幼少期から現在に至るまで漫画に夢中なことから、今も月100冊以上を読んでいる。その中でも『アオアシ』は本当に大好きな作品の一つだ。
荻野さんが企画を立ち上げ、漫画家・小林有吾氏に話を持ち掛けたと伺ったが、連載開始前にどのような構想があったのか。
荻野 『ビッグコミックスピリッツ』編集部に在籍当時、いつかサッカー漫画を雑誌の柱としたいと考えていた。メジャースポーツを扱った作品はヒットしやすく、特にサッカーは国内外問わず人気の競技だったからだ。
ただし『キャプテン翼』(集英社)や『GIANT KILLING』(講談社)など、これまでの名作とは異なる新たな切り口で、かつ、われわれ青年誌の読者層である20代~40代にも響くものでないと広まらない。考え抜いた末にたどり着いたのが「育成」というコンセプトだった。
今野 『アオアシ』の主人公・葦人が所属するのはJリーグチームの下部組織であるJユース。彼らは高校生でありながら、プロの世界を目指してプレーする。本作品では成長する主人公たちの視点だけでなく、監督やコーチなど、彼らを育成する大人目線の思考や葛藤なども描かれている。クラブチームの選手や監督たちへの生の取材を通じてリアリティーを持たせ、育成する側・される側双方の視点を織り交ぜつつストーリーが進行していくところが、本作品の特徴だ。