2024年4月27日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年12月6日

サッカーと漫画
それぞれの30年

保手濱 今年はJリーグ発足から30年の節目となる。この間、平成から現在に至るまで、サッカーと漫画それぞれの変遷をどうみるか。

荻野 サッカーに関していえば、Jリーグ発足当時はジーコ選手やリトバルスキー選手など、海外で活躍した選手が日本でプレーすることでスター選手として目立っていた印象がある。一方、近年では日本全体でユース世代の育成に力を入れてきたことも功を奏し、クラブチームの下部組織から巣立って海外で活躍し、日本代表として再び戻ってくるような選手も増えている。こういったことは20年、30年前には見られなかった。日本サッカー界全体の進化、そして各クラブチームの日々の努力の積み重ねの成果だと評価している。

保手濱 クラブチームが育成力をつけていく中で、選手を自ら育て、組織戦術に沿ってマネジメントしていくことがチーム力向上にとって効率が良いと気付いたのだろう。

今野 取材を通じてサッカーの現場によく足を運ぶが、ユース世代の中高生は自分やチームのプレーを動画で撮影し、練習後にiPadで見返しながら足元の技術面やポジショニングなどをチェックしている。さらにYouTubeなどで海外の一流選手のプレーを見て学んでいる子も多い。テクノロジーを用いて、最先端の知識や海外の技術を取り入れたり、自分のプレーを客観視したりする試みの重要性は年々増加しているように思う。

荻野 漫画業界においてもデジタル分野の進化をいかに取り入れるかという視点は重要だ。15年ほど前、スマートフォンが浸透する以前からその兆しはあったが、漫画を紙ではなく電子で読めるようになったことで、それに対応する形でコンテンツの作り方や見せ方も変えていかなければならないと日々考えを巡らせている。

今野 ハード面の変化に対応していくべきであることは間違いないが、漫画というコンテンツの部分では今も昔も変わらない、普遍的な面白さがあると私個人は思っている。小学生の頃に夢中になった『SLAM DUNK』(集英社)は大人になった今見返しても面白いし、現代の中高生の間でもいまだ根強い人気がある。『アオアシ』も今年の4月からNHKでアニメ放映が開始したが、多くの世代の方々に、何年経っても楽しんでもらえる作品になればと願っている。

 後編ではさらに、漫画をきっかけにリアルサッカーを楽しむコツ、作品の転機となったシーン、サッカー×漫画の可能性などについて語り尽くす。
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 平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。
 

   
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