2024年12月12日(木)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年12月7日

 コミックス累計1600万部を突破した、国民的人気サッカーマンガ『アオアシ』(小学館)。前編では、「育成」というコンセプトに至るまでの経緯や、平成におけるサッカーと漫画それぞれの変遷などを聞いた。
 後編では「Wedge」本誌連載『MANGAの道は世界に通ず』の筆者・保手濱彰人氏と、企画発案者・荻野克展氏と現編集者・今野真吾氏の2人がサッカー×漫画の〝コンテンツ力〟に迫る。(聞き手/構成・編集部 川崎隆司)
『アオアシ』主人公の青井葦人選手(SHOGAKUKAN)

荻野 読者の方から寄せられる感想として「『アオアシ』を読んでサッカーが上達しました」といった声を多く頂戴する。『アオアシ』ジュニア版の監修者であり、今は指導者としても活躍する元日本代表の中村憲剛さんにもお墨付きを頂いたが、主人公らの視点を通じてテクニカル面やメンタル面での課題と向き合い、その解決方法が言語化されることで、読者自身も自分事としてうまく落とし込み、頭の中で整理できるのだと思う。

荻野克展 Katsunobu Ogino
小学館『ビッグコミックオリジナル』編集部 副編集長。『アオアシ』の企画発案者。実写映画化もされた人気漫画『ソラニン』や『土竜の唄』など、数々の人気漫画に携わる。元ラガーマン。

保手濱 私自身、教科書を読むのが苦手で、漫画を通じて古文を学び大学受験に臨んだ人間なので「漫画から学ぶ」という姿勢はとても腑に落ちる。一昔前の漫画は、読むことで「感動」や「爽快感」といった感情を消化して終わるものが多かったが、近年では、読むことを通じて現実世界での学びや成長につながる、実用的な漫画コンテンツが増えたように感じる。

保手濱彰人 Akihito Hotehama
キャラアート代表取締役会長。1984年生まれ。東京大学工学部中退。在学中に起業するなどして2014年に株式会社ダブルエル(現・キャラアート)を創業。現在は日本のポップカルチャー・コンテンツの国際展開を図ることに注力している。

荻野 経験者だけでなく、これまで全くサッカーに触れてこなかった層にも、『アオアシ』を読んでサッカー自体の魅力を届けたい、との連載開始当初からの思いがある。

 連載を立ち上げる以前、職場の同僚たちと20人規模で日本代表戦を観戦していた時のこと。日本代表選手のシュートが決まって周囲と喜び合う片隅で、サッカーに詳しい数人が「今の戦術はこうなんだ」「シュートを決めた選手の周囲の動きはこうで」といった会話を交わしていた。私自身は未経験者だが、そのようなサッカーのよりコアな部分も理解した上で試合を見られたらもっと楽しめるだろうなとの直感があった。経験者でなくても、戦略性や戦術といったサッカーの〝見どころ〟を『アオアシ』を通じて知って頂くことで、リアルのサッカーを楽しむ裾野が広がってくれれば。


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