荻野 その通りだ。日本の育成強化のためには、選手をはじめとするサッカーに関わる全ての人たちのリテラシーを高め、一人ひとりが与えられた役割を理解し、自らの役目を最大限果たそうとする意思が重要となる。幼少期からそういった意識を醸成することは、選手・指導者どちらの道に進む場合でも有効となる。
私が作品の中で好きなキャラクターは主人公・葦人の指導者である福田監督だが、彼は高い戦術理解力を持ちながら、未熟な選手たちを決して自分の型にはめようとはしない。ときに厳しく接し、ときに反応を待ち、とにかく選手自身に考えさせる。その根底には、「自分の想像を超える選手になってほしい」との願いがある。私も部下を持つ身だが、彼の姿勢から教わることは多い。
サッカーと漫画の共通項
国境や言語の垣根を超える
保手濱 すぐに〝答え〟を伝えることは簡単だが、選手や部下の考えを引き出した上で、その場所まで自分の力でたどり着かせることが、マネージャーの果たすべき役割だ。
最後になるが、世界中で親しまれるスポーツ「サッカー」と、日本が世界に誇るコンテンツ「漫画」の掛け合わせは、今後の海外市場を見据えても大きな魅力を持っていると感じる。世界に目を向けたときに、今後『アオアシ』をどのように楽しんでもらいたいか。
荻野 ワールドカップの熱狂にもみられるように、サッカーは国や地域に限らずみんなで楽しめるスポーツだ。漫画も同様に、絵で視覚的に理解できる部分が大きいため、多くの人に届く可能性がある。『アオアシ』が国境や言語の垣根を越えたコミュニケーションツールとなってくれれば、これほど嬉しいことはない。
今野 今この瞬間も『アオアシ』の翻訳版や電子版が世界各国で読まれている。さらに、アニメ化をきっかけにテレビの画面を通じても世界中の人たちに楽しんでもらうことができる。日本でも海外でも、サッカーが好きな方もそうでない方も、必ず読んで楽しめ、新たな発見を得られる作品なので、これからも『アオアシ』の魅力を全世界に向けて発信し続けたい。
平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。