Wedge REPORT

2019年10月30日

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 「4日振りに停電が復旧してテレビをつけたら、自分たちの地域のニュースが全く流れていなかった。こんな大変な思いをしているのに、世間には知られていないのかと落胆しました」

 9月9日の未明に千葉県の房総半島南端から東京湾沿岸を北上した台風15号は甚大な被害を及ぼした。しかし、発災当初、房総エリアの深刻な状況が伝わっておらず、”情報空白地帯”と化していた。南房総市に住む青木多恵子さん(48歳)は当時を冒頭のように振り返った。

広い範囲で台風被害があった千葉房総半島。破損した家屋の屋根にはブルーシートが広がる(Wedge)

 台風の影響で送電線をつなぐ鉄塔や電柱が倒れ、大規模で長期的な停電が発生し、それに伴い通信障害も拡大していった。自治体は被害状況の把握に手こずり、県との情報共有や災害対応が遅れていった。また、この背景には自治体合併といった行政の広域化による課題も浮き彫りにした。

 高度に情報化された社会で情報通信インフラが寸断された場合、住民の安否や被害状況を把握するために、行政や地域はどう備え、行動すべきか。房総エリアの当時の状況や自治体の対応をたどりながら検証した。

停電で長期の通信断絶 高度情報化社会の脆さが露わに

 房総半島で台風がまさに猛威を振るっていた9日未明、鋸南(きょなん)町役場はすでに停電していた。自家発電で最低限の電源を確保したものの、雨漏りによる故障で固定電話が使えない。携帯電話も通じなくなっていた。衛星電話は屋外に出なければ使えないが、暴風雨の吹き荒れる外に出ることは考えられない。「外との連絡が全く取れない状況だった」と町職員は振り返る。その夜は、在庁する職員で避難所の設置など住民の安全確保に努めた。

 朝になり、台風が過ぎ去っても、停電は続いた。庁舎も強風で窓が割れ、壁の一部がはがれ落ちた。携帯電話の電波は心もとないままで、職員間で満足に連絡が取れない。避難所に集まってきた住民の対応もあり、町内全ての状況把握に職員を当てることができなかった。

 そこで町は、各地区の住民代表である区長26人に情報収集と提供を呼びかける”人海戦術”を選ぶ。ただ、電話がつながらず、各区長の自宅を訪ねたため「依頼するだけでも丸一日かかった」(町職員)。区長は町内約3700世帯をまわり、人的被害や住宅の損壊状況を確認。民生委員をはじめとする住民からの情報も合わせて、状況を把握した。すべての被災情報を町が把握するまでに5日間を要した。

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