Wedge REPORT

2019年9月23日

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 壊れた屋根に広げるビニールシート、壁がはがれ鉄骨が剝き出しになったままの建物、積みあがるがれき。台風15号による風水害被害は、千葉県内に今なお爪痕を残す。ただ、停電が解消される地域もみられ、復旧への歩みを進めている。そんな中、被災住民の1日でも早い〝普段の暮らし〟へ大きな力となっているのが、地域での人と人とのつながりだ。

まちには、がれきが積み上がり、屋根にブルーシートが張られた家屋が並ぶ

悪天候の予報で気になる雨漏り、それでもお隣さんが

 「ポタポタと音がしていると思っていたら、いつの間にか2階が水浸しになっていた」

 地区一帯で甚大な被害を受けた鋸南町の港町で、2階建て一戸建てに住む森田英子さん(61歳)は台風上陸当初を振り返る。屋根瓦が一部破損し、2階にあった家具や家電はすべて濡れた。

 森田さんは一人暮らし。停電で電話も通じず、遠くに住む息子へ連絡もできなかった。近くのガソリンスタンドも営業できない状態になっており、「車で出かけて、ガソリンがなくなったり、タイヤがパンクしてしまったら、どうしようもなくなる」。何もできない状態に陥っていた。

 そこで、ふと思いついたのが隣人が家を建てた工務店に勤務していた、ということだ。隣に住む元大工の井戸恵吉さん(71歳)に相談すると、「屋根の瓦はいくつか予備を取っておいてあるはず。壊れたものを取り換えれば、まずは雨漏りを抑えられる。瓦が足りない場合は、雨漏りしても影響が少ない軒先の瓦を使えばいい」と言ってくれた。ブルーシートを敷き土のうを置けば、後で屋根すべてを取り換えればならない可能性がある。土のうの重さで新たな破損も懸念される。森田さんは井戸さんに屋根瓦を交換してもらい、雨漏りを防いでいる。新しい屋根瓦を注文し、これから完全修復を進める。業者の手配などで時間がかかってしまってもしばらくは安心な状態だ。

 「隣の人が大工をやっていたことを思い出せたから、良かった。日ごろから、近くに住む人がどのような方かを把握することはとても大事なことだと感じた」と森田さんは話す。

 南房総市の海岸沿いに住む金光朝子さん(62歳)は、災害から2週間ほどたった今でも近所の単身高齢者を車に乗せて買い物へ行く。3年前に移住してきたが、回覧板など地区での活動で近くに75歳以上の単身高齢者が4人いると知っていた。停電の影響で自身の生活もままならない中、近所の高齢者を気にかけていた。

 台風から3日経った時に市役所へ物資が来ていることを知り、単身高齢者それぞれに安否確認とともに食料や水を届け行った。ボランティアとともに雨漏りで濡れた家具の撤去や屋根へのブルーシート張りも行った。「市は単身高齢者の世帯などを把握しているだろうが、今のような状態の時に各世帯をまわるのはできないだろう。地区単位で動けば難民のような状態もなくなるから、できることをやった」と金光さんは話す。地域での〝つながり〟が災害復旧を助けた形だ。

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