2022年8月13日(土)

Wedge REPORT

2019年9月23日

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状況把握も地域住民の力で

 平成の大合併で7市町が合併した南房総市は、東京湾に面する「内房」と太平洋に面する「外房」の地域をともに管轄する。面積が広いだけでなく、中山間部や特色の違う海岸沿いといったさまざまな地域特性を持つエリア全体の被災状況把握は災害の度に難しい状態となっている。

 今回の台風ではこの特殊な地理的環境に停電が追い打ちをかけた。台風が上陸した8日未明から、南房総市役所本庁舎は停電に見舞われた。予備電源や自家発電などで9日は庁舎の電話や携帯電話などで職員同士らが連絡を取り合い、防災メールで住民への避難所の情報などを伝えていたものの、だんだんと通信が途絶え始める。通信各社の基地局の予備電源が尽きたためだった。また、電波を使わない防災行政無線に関しても、街中に置いているスピーカーのバッテリーが3日ほどで切れてしまう。無線による情報発信は市民に届かなかった。電波が切れたことによって外から情報を収集できない、電話による情報共有もできない、市民らへ広く状況を知らせることもできなくなってしまった。「災害対策本部を設置した本庁舎の職員を各地の地域センターへ伝令のような形で向かわれるしかなかった」と市職員は振り返る。

今回の台風は、広い範囲で大きな被害を及ぼした

 そんな中で、状況実態把握に貢献したのがやはり地域住民同士のつながりだった。消防団が市内をくまなく回っていったのだ。消防団は市町村が設置する地域住民らによる消防機関。常勤で消防業務に従事するのではなく、別の仕事などにつきつつ有事の際に消火や救助の活動を行う。南房総市内では、7師団、さらにその下に分団を持つ。有志の地域住民が全世帯をまわり、建物の状況といった被害程度を確認していった。17日までには、市内全域の実態把握をしたという。

 嶋田守副市長は「台風上陸時は市役所も水浸し。職員は役所としての機能を取り戻すなど目の前の業務に追われていた」と振り返り、市民の助けが実態把握に大きく影響したことを指摘する。

炊き出しで〝タピる〟

 被災の情報を得て、他県からのボランティアも数多く足を運んでいる。「何か助けがしたい」という一心で駆け付けたボランティアをつなげているのも地域のコミュニティだ。

炊き出しでは、タピオカミルクティーも振る舞われた

 房総半島南端部の海岸沿いで台風被害を受けた館山市相浜。農産物の直売やレンタサイクルを提供する施設の駐車場に、キッチンカーが置かれた。提供されるメニューは、タピオカミルクティーと鶏のから揚げ。仙台市を中心に店舗展開するタピオカ専門店「琥珀(こはく)」が炊き出しに来ていた。

 千葉での被災のニュースを見て、「東日本大震災の時には多くの人に助けていただいた」という思いから、駆け付けた。タピオカミルクティー2千杯と、「温かいものを食べてもらいたい」という思いから鶏のから揚げ100キロを車に積み、5人で前日の夜中に仙台市を出発。午前中から準備して、昼間から夕方にかけて提供した。

 館山へ来る際には、地元へも連絡。どの地区でどのような形で炊き出しをするのが良いのかを相談していた。館山市は安全安心メール、周辺の小中学校は学童のお知らせで開催時間と場所を周知させていた。取りに来られない世帯に対しては、市職員やボランティアが運んだ。

 近所の友人と一緒に炊き出しに来ていた近くに住む黒川智子さん(62歳)は「スーパーに行けば食べ物を買えるくらいには日常が戻ってきたが、みんなまだ気持ちが沈んでいる。県外の人がこうして駆け付けて来てくれることが嬉しい」と今流行のタピオカミルクティーを片手に笑顔をこぼした。

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