気温45℃を超える猛暑に覆われるヨーロッパで、山火事被害が相次いでいる。地球温暖化による異常気象が原因で、森林破壊が進むと考えられる一方で、山火事のほとんどは人為的災害によるものともいわれている。
スペイン北東部カタルーニャ地方では6月、過去20年で最悪の山火事に見舞われ、6500ヘクタール(65平方キロメートル)が焼失。ポルトガル中部でも、7月下旬、消防員800人を動員する山火事が発生し、8500ヘクタールが破壊された。
欧州委員会によると、ヨーロッパでは、昨年1年間で、合計120万ヘクタール(東京ドーム25万個以上)が焼失し、一般市民と救助隊を合わせて、127人の命が奪われたという。そして、その被害総額は100億ユーロ(約1兆2000億円)に上った。
ヨーロッパ全体でみると、山火事の割合は南欧諸国に集中している。過去30年間でもっとも被害が多いのはポルトガルで、国土面積の39%が消滅、スペインが24%、イタリアが18%、ギリシャが13%という報告が出ている。南欧諸国全体で考えると、年間に0・6%の森林が焼失している計算になるようだ。
村落地理学を専門とするマドリード自治州大学のホセマリア・マルティネス教授は、「山火事が起きる背景には、過疎化による放棄地の増加がある」との問題を指摘。「人間は昔から、生活の必要性に合わせて山を大事に扱ってきた。今は過疎化により、エコシステムが保たれなくなった」と、村落の管理不足に警鐘を鳴らした。
だが、世界自然保護基金(WWF)の報告書によれば、異常気象による猛暑などの影響で生じる自然発火の山火事は、ほとんどないという。
同報告書では、山火事の4%が自然発火。つまり96%は人間による意図的な放火で、その原因は「何十年にもわたって解決されない村落の社会・経済闘争」だと明かされている。
猟師の狩猟範囲を狭めたり、他人の畑面積を減らす目的であったりなど、人間同士のいがみ合いが山火事の発端になっているという。
今年3月、欧州連合(EU)は、加盟国間で合同救助隊「resc EU」の活動を開始。域内28カ国と周辺4カ国で災害が起きた場合、加盟国が協力して救助に当たる。将来的には、化学事故や原発事故にも対応する見通しで、2020年までは年間1億3600万ユーロが投資される。
だが、これは事後的な取り組みであり、山火事の根本的理由の解決には、相当な時間がかかりそうだ。
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