トルコのエルドアン大統領の求心力の低下が囁かれている。最大の理由は、6月23日に再投票された最大都市イスタンブールの市長選で、世俗派の最大野党・共和人民党(CHP)のエクレム・イマームオール候補者が、得票率で約9ポイント、得票数で約80万票もの大差で与党候補のユルドゥルム元首相に勝利したことである。
3月31日に行われた市長選では、イマームオール候補者が得票率にして0.2%強、得票数にして1.3万票の僅差ながら勝利していた。
だが、その後、エルドアン大統領が党首を務める公正発展党(AKP)の主導する与党陣営が、明らかな組織的不正があったとして投票のやり直しを求めた結果、最高選挙管理委員会(YSK)が同投票を無効と宣告しての今回の再投票であった。それだけに、再投票での大差での敗北は大統領にとり痛手となった。
エルドアン大統領の党内の掌握力が弱まりつつあることを示す今一つの動きが、AKP創設メンバーのババカン元首相とギュル元大統領による新党結成の動きである。既にババカン元首相筋は、今秋を目途に新党結成の可能性の高いことを明らかにしている。
エルドアン大統領は外交面でも難問に直面している。最大の課題は、ロシア製ミサイル防衛システム「S400」の導入を巡り悪化した米国との関係をいかに修復するかである。
トランプ米大統領とエルドアン大統領は6月29日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の開催された大阪で会談し、ロシア製ミサイルの購入に関して意見交換している。
トランプ大統領は、同会談冒頭でトルコがロシア製ミサイル・システムを導入した場合に制裁を発動するかを記者団に問われ、検討していると答えるに留めた。その上で会談後の記者会見において、トルコが同ミサイル・システム購入を決定したことに懸念を表明し、トルコに対して、北大西洋条約機構(NATO)の同盟強化につながる対米防衛協力の推進を要請していた。
他方、トルコ大統領府は同会談後、トランプ大統領は両国関係を害することなく問題の解決を図りたいとの願いを口にしていたと発表していた。
今のところ、ロシア製ミサイル・システムのトルコ導入が始まっていないこともあり、米国の制裁も発動されていない。
ただし、米国は既に6月中旬時点で、ロシア製ミサイル・システムの購入を撤回しない限り、米国の最新鋭ステルス戦闘機「F35」をトルコに納入しないと表明している。また、仮に導入となった場合に備えて3種類の制裁が検討されていることも明らかにされている。
求心力が低下するなか、内憂外患に陥ったエルドアン大統領が、次に如何なる手を打ってくるのか注目したい。
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