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2019年10月25日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 台風19号による浸水被害は、河川の氾濫に加えて、都市部では大量の雨水を下水道から川に排出できなくなって水が地上にあふれ出る内水氾濫を引き起こした。川崎市や東京都世田谷区ではマンションや病院の内部にまで大量の浸水が起きて、予想外の事態を招く結果になった。これまで大きな災害リスクにならないとされていた都市部の内水氾濫の今後の対応策について、都市工学が専門の古米弘明・東京大学工学系研究科教授に聞いた。

(SeanPavonePhoto/gettyimages)

排水能力の限界

Q 内水氾濫はどんな時に起きるのか?

古米教授 下水道は都市に降った雨水を排除する役割を担っており、河川に放流するためのポンプなどが整備されてきた。しかし、近年、ゲリラ豪雨と呼ばれるような局地的な大雨が頻発し、全国各地で浸水被害が多発している。

 今回の台風19号の場合は、広域で長時間にわたり大雨が降ったケースだが、局所的に短時間に1時間に80㍉から100㍉降ることで起きる場合もあり、区別して考える必要がある。局所的な場合は、通常は下水道の排水路などを通して排水されるが、その排水能力は設計上1時間に50㍉の雨に対応した排水能力しかないので浸水することはある。

 現在の整備目標は、これまで最大の降雨でも床上までは浸水しないことだ。そのためには排水能力を強めるとか、雨水の調整池や貯留池を設けることなどが求められる。

Q 多摩川沿いの川崎市で起きた内水氾濫はどのようなことから発生したと考えられるか?

古米教授 下水道からは河川に雨水が流れるようになっているが、河川に流れ込む前に下水道には開閉できる排水ゲートが設けられている場合もある。川崎市の場合はゲートが閉まっていないケースだ。しかし、ゲートが閉まっていて、排水ポンプ設備があったとしても、内水側の流出量が多いと内水氾濫は起こりえる。ポンプ設備があったとしても、排水先の外水位が高いとポンプ排水できない調整がなされるため内水氾濫するリスクも高まる。

「国土交通省のHP」より 写真を拡大

 ゲートが閉まっていないと、外水位が高くなると逆流現象(背水:バックウォーター)が起きて内水氾濫する原因となる。今回はゲートが閉まっていないので、多摩川背水の河川水位が高く、支流からの流出水が停滞し、さらに多摩川の水が支流に逆流して支流の能力を超えて氾濫したものと思われる。また、下水路ではなくても、多摩川に排水する下水管を通じて市街地に逆流することもあり、その場合はマンホールから噴出する(川崎市の下水道部は10月23日に台風19号で多摩川の水位が増したことで、多摩川の水が地中の排水管を伝って逆流したことを確認、多摩川にそそぐ排水管17カ所のうち5カ所で逆流していたという)。

Q 逆流を防ぐ対策はないのか?

古米教授 大雨により河川の水位が上昇すると、支流や都市下水路の流出がしにくくなる。市街地側が河川水位より低い場合には、下水管は貯留対策がないと河川の水位の上昇により容易に逆流して内水氾濫を起こす。このため、こうした逆流が起きやすいところには逆流防止弁(フラップ弁)が設置されているが、その頻度が少ないところには設置されていない。

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