首都圏のマンションを中心に、中古物件の成約件数が2016年から18年まで3年連続で新築を上回るなど活発になっている。不動産業界では中古マンションの流通、リノベーションなど中古関連ビジネスが拡大する中で、7月に都心の高級マンションを専門に取り扱う店舗を開設するなど、中古市場に力を入れている住友不動産販売の青木斗益副社長に、その背景と狙いを聞いた。
首都圏、近畿圏ともに中古価格が上昇
2018年(1月~12月)の首都圏中古マンション(70平方㍍)の成約件数は、3万7217件(前年比0.3%減)と過去最高の件数だった前年をやや下回ったが、3年連続で3万7000件台。成約価格は3334万円(同+4.3%)で6年連続上昇した。近畿圏の中古マンション成約件数は、1万7644件(2.1%増)と2年連続で前年比増加し、価格は2184万円(同+5.2%)で6年連続の上昇、3年連続で2000万円台をキープしている。
東京カンテイの調査によると、今年9月の首都圏の中古マンション価格(速報値)は前月より0.6%上昇して3726万円、東京都内は2.7%増の5164万円で最高値を更新、23区内は2.2%増の5763万円と高水準になっている。前年同月で比較すると、首都圏は2.5%の上昇に対して、都内は5.5%、23区内は6.9%上がっており、都心志向強いことを裏付けている。近畿圏の9月は前月比変わらずの2367万円。中部圏は2.1%増の1989万円で続伸、名古屋市中心部は3000万円前後の相場になっている。
これを同じ立地、広さの新築マンションと比較すると、東京都内の場合で新築は2000万円以上高い7000万~8000万円となる。この価格帯だと、共働きでも2人合わせて2500万円以上の年収が必要となり、購入できる層は限定される。東京カンテイの井出武・上席主任研究員は「東京23区では中央3区(千代田、港、渋谷)の水準が依然として高く、これに引っ張られて中古マンションの価格はジリジリ上昇している。新築マンションの価格は依然高水準で、富裕層は都心3区のビンテージマンションを求め、実需購入者は築20年前後で城北・城東エリアで比較的安価な中古マンションに流れる状況となっている」と分析している。
強い都心志向
Q 中古マンションの販売が伸びている理由は何か。
青木副社長 過去に新築として供給されたマンションは2000年前後に大量供給されたものと、この10年以内に供給されたマンションがボリュームとして多くを占めており、これらのマンションは立地、規模感で稀少性の高い物件が多いことが挙げられる。この2、3年は首都圏では新築と中古マンションを合わせてほぼ半数ずつの年間7万戸ほど成約されているが、今後、大規模な土地の放出が少ないと思われることなどから新築が減れば、比較感の中で中古が選ばれることが多くなるのではないか。
Q どういう層が中古マンションを買っているのか。
青木副社長 コアとなっているのは、高齢者と共稼ぎのパワーカップルと呼ばれる人たちだ。高齢になると郊外の一戸建てよりも駅に近いマンションが便利なので、戸建てを売って購入するケースが多い。もう一つは共稼ぎの場合、2人の勤務する場所に近いところに住みたいため、通勤に便利な立地の都心のマンションが好まれる。新築にするか中古にするかは悩まれるが、親会社である住友不動産と顧客の情報を共有して、新築、中古のどちらでも対応できるようにしている。都心の新築マンションは今後供給量が増加するとは考えづらいので、都心を希望する顧客の場合は、立地・規模感で優良な中古物件を検討するケースが増えてくるだろう。
Q 駅に近い中古マンションが選ばれるのは首都圏以外でもその傾向がみられるか。
青木副社長 関西でも大阪の梅田周辺を含め中心部に建てられたタワーマンションの人気が根強く、中心部に回帰する動きがみられる。阪神間では山の上に高級な住宅が建てられた時期があったが、いまは山の上から降りてきて駅の近いところに移り住む傾向だ。