2025年12月20日(土)

下水道からの警告

2025年12月20日

 下水道管に一歩踏み入れた瞬間、「もわっ」とした生温かい空気が全身を包んだ。乾湿計の湿度は100%。排水溝の澱んだ臭気が鼻を突いた。下水がゆったりと流れていく先には静かな暗闇が広がっていた──。

東京の小平市ふれあい下水道館にある「小川幹線」の見学施設(WEDGE以下同)

 西武国分寺線の鷹の台駅から徒歩約10分。小平市ふれあい下水道館にたどり着いた。同館は、(雨天時などを除き)使用中の下水道管を予約なしで自由に見学できる施設だ。1階から入館し、地下に降りながら下水道の歴史や仕組みについて学ぶことができる。地下5階では、実際に使われている合流式の下水道管・小川幹線を見学することが可能だ。同幹線は、内径4.5メートルの大きさで、見学時には20センチ・メートルほどの下水が流れていた。同幹線を流れる下水は約4時間かけ、府中市の水再生センターへと流れ込む。

 小平市は1970年に公共下水道整備事業に着手、90年には全国で13番目の早さで整備させた。一方で、多額の債務と維持管理費の負担が残った。しかも、小平市の下水処理は他自治体の施設が担っている現実もあり、下水道に関するものはマンホールの蓋しか目につかない……。そうした問題認識と危機感から下水道の持つ社会的意義を知ってもらうため、95年に小平市ふれあい下水道館が開館した。

 同館は、小学生や団体の社会科見学の場としても使用されている。同館に勤める職員は、「埼玉県八潮市の道路陥没事故が起こってからは下水道への関心が高まっている」と言い、こう続ける。「フランスのパリ、オーストリアのウィーンと並び、小平は自由に下水道管を見ることができる数少ない施設です。ぜひ皆様に訪れていただきたいですね」


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