2025年12月20日(土)

下水道からの警告

2025年12月20日

400年前からある下水道

 下水道管を身近に感じることができる場所は各地に点在する。例えば、横浜市には1881~87年に旧外国人居留地に近代的なレンガ造りの下水道管が整備され、現在も当時のその遺構を見学することが可能だ。また、JR神田駅前には東京都指定史跡である「神田下水」があり、140年以上経つ今でも使用されている。

 また、大阪市には約400年前から使用されている「太閤下水」がある。

 「『太閤下水』は江戸時代につくられたもので、20キロが現在も使用されています。そのうち大阪市が管理している7キロが2005年に大阪市文化財に指定され、『太閤下水』の見学施設がつくられました」

 大阪メトロ谷町四丁目駅から徒歩10分。「太閤下水」を案内してくれたのは、一般財団法人都市技術センター主幹の坂口和功さん。普段は下水道管上部に設置された小窓から下水道管の中の様子を見ることができるが、事前に連絡すれば内部を見学することもできる。

 「豊臣秀吉による大阪のまちづくりと関係しているため、『太閤下水』と呼ばれています。見学施設のある下水道は、建物が背中合わせの場所にできた溝であるため、背割下水とも呼ばれます」(同)

 見学施設の中に入るとやはり湿度が高く、下水道管の底には苔が生え、側面には石が積まれていた。

 「太閤下水」はかつて素掘りの溝で、雨水などを流していた。1894年に大阪市で近代下水道事業が始まった際に床にコンクリートを打つなど改造し、現在の形になった。

 現在、この「太閤下水」を通る下水は西成区の津守下水処理場に流れるが、かつては見学施設の約300メートル西にある東横堀川に流れていた。

 見学施設から出て下水が流れる西の方角を見ると、建物と建物の間に細い道があった。地図を見ると「太閤背割通」と記載されている。

「太閤下水」。「側面の石は奈良県・生駒山の花崗岩が使用されている」(坂口さん)

 「太閤背割通の下には見学施設から延びる背割下水が続いており、通りを境に『和泉町2丁目』と『農人橋2丁目』で町名が変わります。まちづくりの名残が現在にも存在するのです」(同)

 様々に発展した下水道は人々の営みの歴史を知ることにもつながるだろう。

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Wedge 2026年1月号より
下水道からの警告 地下空間の声を聞け
下水道からの警告 地下空間の声を聞け

埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故から間もなく1年。各地で下水道の老朽化が問題になっている。しかし、都市と地方では下水道が整備された年代は異なっており、老朽化に悩む自治体もあれば、縮退を決めた自治体もあるなど、問題は様々だ。下水道をはじめとしたインフラは私たちの日常を支える「基盤」であり、「機能」である。目に見えない地下の世界の声を聞き、私たちが直視すべき課題と解決の糸口を提示する。


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