トランプ米大統領が国家予算の“浪費”にメスを入れるためスタートさせた特別組織「政府効率化省」(DOGE)旋風は、発足4カ月足らずで失速しつつある。だが、国内外に残した爪痕はことのほか大きい。

遠く及ばない節約実績
トランプ大統領は去る1月20日就任式演説で、財政赤字削減の切り札として「DOGE」構想を打ち出すとともに、その責任者として実業家イーロン・マスク氏の登用を発表、その際、「今年3月までには最低でも政府の無駄を1兆ドル節約する」と豪語して見せた。
その後、マスク氏は5月末、本来の自分の会社経営に専念するため、「DOGE」から身を引くことになったが、3月どころかその後2カ月過ぎた段階でも「節約実績」は1兆ドルにも遠く及ばなかった。
結局、退任の際には、自らのウェブサイト上で「1750億ドルは無駄を削減した」と実績を大幅下方修正する見通しを明らかにしたが、専門家の間では、それすらも「誇張」との見方が広がっている。
例えば、「DOGE」はこれまでの実績として、納税者一人当たりの平均節約額を「$1086.98」と公言し、全米の個人納税者数を「1億6100万人」として試算したことを根拠に挙げている。
しかし、財政に詳しいミシガン大学のベッツィ・スティーブンスン教授によると、個人の場合は、夫婦が揃って申告している場合が多いため、実際の納税者数は倍近くになり、結局、一人当たりの節約額は半分の「$514」にとどまるという。
また、発足以来、「DOGE」の実績を追跡してきたCNNテレビ担当記者は、「DOGE」がこれまで具体的に①政府関連事業の停止で320億ドル②政府助成金打ち切りで400億ドル③政府リース契約解消で2160億ドル—を節約したとしている点について、「そのいずれについても、実績を裏付ける証拠や書類はほとんど存在しておらず、間違いだらけの試算に基づくものが多い」と指摘している。