2025年12月5日(金)

トランプ2.0

2025年6月26日

 「DOGE」組織そのものについても、トランプ氏は「今後も活動継続」の意向を表明しているものの、最高責任者マスク氏に続き、実戦部隊のトップら中心的役割を担ってきた幹部たちもあいついで退任を表明しており、「DOGE」が発足当初のような大ナタを振るい続けるだけの態勢を維持できるかどうか疑問だ。

これから支払う〝コスト〟

 反面、「DOGE」が残した「負の遺産」は極めて大きい。

 まず、連邦政府職員の大規模な削減や人事異動を断行した結果、内国歳入庁(IRS)などのように、納税者の確定申告業務や脱税監視、追徴処理といった税収に直接かかわる業務に支障が生じており、国家財政にも少なからず影響を及ぼすことが懸念されている。

 各州の国立公園管理職員も大幅人員削減した結果、公園内の点検、清掃、保全などの作業に支障をきたし始めており、近い将来、原状回復を余儀なくされた場合、新たに従来以上の出費は免れない。

 また、連邦政府職員を次々に解雇し、配置転換したものの、公務に支障を来たした結果、再雇用あるいは新規採用を余儀なくされた場合、新たな現場での訓練や指導が必要となり、そのためのコストが概算で「1350億ドル程度」との専門家の指摘もある。

 この点に関連して、スティーブンスン教授はCNN番組で「結局は、『DOGE』による節約額とそのために支払われるコストとの帳尻は、トントンに近い。納税者にとって本当に節約になったかどうか不明瞭だ」と総括している。

 こうした帳簿上の“収支”以上に見逃せないのが、政府に対する国民の信頼度の低下と、さらに米国そのものに対する国際的信用失墜、米国の対外影響力の低下だ。

 代表的世論調査機関「ギャラップ社」が昨年実施した政府に対する信頼度調査によると、「まったく信頼しない」が24%、「あまり信頼しない」が33%と、国民の大半が政府に対する不信感を抱いていることが明らかになった。別の調査機関「Pew Research」による昨年調査でも、「信頼する」はわずか「22%」にとどまっている。

 今年に入り、トランプ政権が「DOGE」を発足させ、政府各省庁管轄下の多くの計画や施政にメスを入れ始めた結果、有権者にとっても様々な面で不都合が生じ始めていることから、政府に対する信頼度のさらなる低下は必至だ。

 中でも深刻な事態を迎えつつあるのが、「DOGE」が政府支出削減の一環として社会保障庁(SSA)にまでメスを入れ始めたことだ。

 具体的には①“大規模な年金受給不正”のデマ流布による各種社会保障プログラム攻撃②年金支給当局の電話対応スタッフの大幅人員削減③7300万人にも及ぶ全米年金受給者情報の収集・更新・点検に携わる専門職の縮小④情報管理に不慣れな「DOGE」の若手スタッフによる機密性の高い社会保障庁データ漏洩などの動きが批判の対象となっている。

 こうしたことから、各州ではすでに、受給者に対する年金支給の遅滞、新たな年金受給申請の未処理などの苦情が報告されており、トランプ政権に対する不満が次第に高まりつつある。


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