2025年12月5日(金)

トランプ2.0

2025年6月26日

米国の対外的影響力の減退

国内に残した爪痕以上に懸念されるのが、米国の対外的イメージ低下、信用失墜だろう。

 トランプ大統領がこれまでに「DOGE」を通じ大幅な人員削減、解雇に踏み切った対外関係の政府機関のうち、最も深刻なダメージを与えているのが、米国国際開発庁(USAID)と「グローバルメディア局=US Agency for Global Media」(USAGM)の二つの解体、縮小だ。

 まず、USAIDはジョン・F・ケネディ政権下の1961年、米議会の「対外援助法」の一環として設立以来、アフリカ、アジア、中南米などの120カ国以上の途上国に対する積極的な経済、人道支援を行ってきた。

 予算規模は毎年約400億ドル、職員数は米国人5万人、現地職員10万人以上から成っているが、トランプ大統領の行政命令により、3月末までにそのほぼ全員が解雇処分となり、組織自体も国務省管轄下に吸収されてしまった。

 マルコ・ルビオ国務長官は「USAIDの援助プログラムの83%がすでにキャンセルされた」と胸を張った。

 この結果、①エジプト、モザンビーク、トーゴ、カンボジアなど各国駐在の米国人職員と家族は突然の解雇による帰国準備、旅費などの資金も打ち切られた②バングラデシュ、ソマリアなどの諸国では、緊急食糧援助がストップし、住民の間で早くも飢餓状態が表面化している③米国内から途上国向けに積み出された大量の食料品が途中の港、倉庫などで棚ざらしとなり、賞味期限付き食糧加工品も腐食し始めている④アフリカ最貧国児童向けの各種予防ワクチンが不足している⑤スーダンの地域住民給食施設「コミュニティ・キッチン」の80%が閉鎖され、数百万人が飢餓の危機に瀕している⑥ウクライナに対する大量のトウモロコシ援助が完全ストップしたなどの事例が報告されている。

 また、こうしたUSAIDによる援助の最大の特徴は、「政府ひも付き援助」にある。すなわち、大量の援助物資の9割近くが米国内の農家や加工工場、医療メーカーなどから調達されており、その額は莫大なものになる。

 ところが、対外援助が打ち切られたことで、今後、収入を当て込んできた米国の農業、製造業もそのしわ寄せを受けることは必至だ。

 さらに、戦略的観点から見て、USAID解体による中長期的損失はことのほか大きい。

 例えば、援助を受けてきた多くの途上国では、USAIDの恩恵で高等教育を受け、その後、それぞれの国で町長、市会議員、国会議員、政府閣僚として活躍している政治家、NGO(非政府組織)のリーダーとして活躍している人たちが少なくない。その多くが親米的立場をとってきたとされる。

 しかし、今後、こうした指導者たちが育たなくなれば、それだけ米国の対外的影響力の減退が危惧される。

 また、食糧不足、病気の蔓延、生活用水の断絶などから国内政情不安、地域紛争激化、難民増加などの国際問題にも発展しかねない。


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