米公共ラジオ(NPR )が5月27日、政府資金の提供を停止したトランプ政権をワシントンの米連邦地裁に提訴したと発表した。トランプ大統領がNPRと米公共放送(PBS)への資金提供を停止する大統領令に署名したことに対し、言論の自由を定めた憲法修正第1条に違反していると主張している。
「偏向メディアへの納税者負担の廃止」と題したこの大統領令は、両組織にこれまで資金を提供してきた公共放送機構(CPB)に資金の提供を停止させるとしている。この大統領令には、なぜこのような大統領令を出したかわかりやすく説明する概要書が添えられていた。それによると、NPRとPBSの番組は大きく左に偏向しており、民主党寄りであるというのである。
NPRの番組「ニュースルーム」の編集者の登録政党が民主党87人に対して共和党ゼロあったこと、PBSの「ニュースルーム」において半年の間に「極右」という言葉が162回も使われたのに「極左」はたった6回だったこと、PBSがトランスジェンダーの若者を賛美する映画をつくったことなどが羅列されていた。NPRとPBSが、税金が投入されているにもかかわらず、いかに極端にリベラルな考えをもっており、民主党を支持している偏った放送局の団体であると示す内容であった。
対立する「非政治的」立ち位置
NPRとPBSへの資金提供を禁止されたのは、1967年にジョンソン政権において成立した公共放送法に基づいて設立された非営利団体のCPBである。CPBの目的は、非営利の、高品質なコンテンツおよび通信サービスへの普遍的なアクセスを確保することとされている。その目的を達成するため、今日CPBは、税金を原資に全米の公共ラジオや公共テレビに多額の補助を行っている。
このように税金で運営されているCPBは、法律上非政治的でなければならないにもかかわらず民主党に大きく貢献している、とトランプ大統領はいうのである。ただし、トランプもジョンソンの作ったCPBという組織を頭から否定しているわけではない。これまで果たしてきたその役割を評価しつつ、CPB設立当初と異なり今日の米国民は、ニュースを得るために多様な手段を持っており、そのような状況において、政府がニュースメディアへの公的資金援助を行うことは「時代遅れで不必要であるだけでなく、ジャーナリズムの独立性の外観を損なう」と主張するのである。