台湾の頼清徳総統は5月20日、就任から1周年を迎えた。中国の圧力に向き合い、トランプ米大統領の関税政策にも悩まされながら、中国に対しては強い対決姿勢も辞さず、野党議員に大量罷免運動を仕掛けるなど、アグレッシブで強気な指導スタイルを貫いている。就任1年の世論調査ではおおむね過半数に近い支持率を得て、過去のリーダーより強い民意に支えられる形での船出となった。

その中で、就任1年目を迎える直前、日本メディアとの単独インタビューを相次いで行った。台湾や日本でも話題となったのは日本テレビのニュース番組「NEWS ZERO」に出演し、同番組キャスターで嵐のメンバーである櫻井翔氏のインタビューを受けたことだ。ほかにも日本経済新聞の単独インタビューも受け、「日本重視」をにじませたが、その動機はどこにあるのかを探った。
総統府が〝異例〟の説明
総統府の郭雅慧報道官は26日、SNSで異例の「総統インタビューのバックグラウンド」について詳しく説明するポストを行った。
そこでは「なぜ日本メディア2社のインタビューを選んだのか」という点について「台日関係は世界情勢への対応の重要な一部で、将来の地域平和、産業貿易協力、台日人民の往来の深化が必要である。インタビューを通して国家の方向性、台湾海峡の平和を守る決意、台日経済貿易協力の重要性を論述し、日本メディアを通して世界に伝えたかった」と書いた。
また、日本経済新聞については「インタビューを通して、日本政府、国会、社会、民間に対して長期にわたる台湾への支持の感謝を伝えた。今の石破茂首相だけでなく、安倍晋三、岸田文雄ら過去の首相の方々の台湾への支持、台湾と日本の人民の深い感情の交わりに感謝した」と付け加えた。
総統府サイドからあえてこのような声明を出すにはいくつかの理由があったと筆者は考えている。それは日本メディアの中で「なぜ台湾に支局がないメディア(日テレ)のインタビューを受けるのか」という不満である。
台湾には日本のテレビはNHKが、新聞は朝日、読売、毎日、日経、産経、西日本が支局を置いて日々、現地で台湾報道に励んでいる。彼らの多くも当然、総統府に対してインタビューを申請していたはずである。当然、「なぜ?」という疑問は生じるだろう。