2026年はスポーツの国際大会が目白押しとなる。3月は野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が行われ、6月にはサッカーのワールドカップ(W杯)北中米大会が開幕する。直近の2月6日に開幕するのがミラノ・コルティナ五輪(イタリア)だ。
フィギュアスケート女子の注目は、代表選考会を兼ねた25年末の全日本選手権で5連覇を飾り、3大会連続での五輪代表入りした坂本花織選手(シスメックス)。女子もトリプルアクセルや4回転ジャンプを組み込む「高難度ジャンプ時代」を迎える中、大技ではないが、スピードを武器としたスケーティング・スキルと磨き上げた表現力で世界の頂点へ挑む。今シーズン限りで引退する25歳のオリンピック・ラストダンスの行方は――。
異次元のスピードで「オンリーワン」のプログラム
「人生は虹色」。坂本選手はこれまでの大半をスケートに捧げてきた人生をこんな言葉で例える。
17歳の若さと勢いで初出場を射止めた18年の平昌五輪、日本女子の第一人者として個人の銅メダルを獲得し、団体の銀メダルにも貢献した22年北京五輪……、22年からは世界選手権で3連覇を飾った。
順風満帆に歩んできたように思える競技人生は、時代の潮流への抗いでもあった。スポーツと芸術を融合させたフィギュアスケートという競技特性にあって、坂本選手の演技は時に論争を呼ぶ。
女子もトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)や4回転ジャンプといった高難度ジャンプをプログラムに組み込む傾向にある時代に、坂本選手の演技には大技がないからだ。
過去のインタビュー記事などでは、4回転や3回転半への意欲を語っている。しかし、最後の五輪でも組み込むことはかなわなかった。台頭してきた若手が大技に挑む中、そんな彼女が前回の北京五輪から全日本の頂点を一度も明け渡すことなく、世界のトップで滑り続けることができた。
その要因こそが、「オンリーワン」のプログラムだ。最大の武器は、女子選手としては異次元のスピードにある。
