2025年6月19日(木)

教養としての中東情勢

2025年5月22日

 トランプ大統領はこのほど、ペルシャ湾岸3カ国を歴訪、総額2兆ドル(約290兆円)の経済取引をまとめて凱旋した。だが同盟国のイスラエルは訪問しなかったばかりか、イランとの核交渉、イエメンの親イラン組織フーシ派との停戦など外交政策を大転換、まるで「イスラエル外し」の様相だ。背景にはガザの戦闘を拡大するネタニヤフ首相に対して“ウンザリする疲れ”があるようだ。

トランプ大統領(左)とネタニヤフ首相は、かつてホワイトハウスで会談していたほどの距離はなそうだ(Avi Ohayon/Israel Gpo/ZUMA Press/アフロ)

米中東政策の大転換

 ネタニヤフ首相はトランプ大統領が当選後に会談した初の外国首脳。4月には再び訪米し2度目の会談も実現するなど蜜月の関係を誇った。だが、その舞台裏で急速に「ネタニヤフ離れ」が進んでいたことに首相自身は気づかなかった。最大の理由はトランプ大統領の説得にもかかわらず、首相がパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとの停戦を拒否し続けたからだ。

 ネタニヤフ首相は2回目の会談の際、トランプ大統領にイランの核施設への攻撃を持ちかけて拒否され、大統領は逆にイランとの核交渉を選択した。交渉はオマーンなどを仲介にして間接的に行われている。イランの最高指導者ハメネイ師は最近の演説で「成功しない」と述べたが、交渉を拒否はしていない。

 トランプ大統領は5月、今度は爆撃を続けてきたイエメンのフーシ派との和解に転じ、米船舶への攻撃停止と米軍による空爆停止で合意した。フーシ派はイスラエル関連船舶などへの攻撃は続行する構えで、直前にはテルアビブの国際空港に弾道ミサイルを撃ち込んだ。米国はイスラエルが攻撃を受ける中で、フーシ派との停戦に踏み切ったわけで、ネタニヤフ首相の失望は大きかった。

 さらに驚いたことに、米国はウィトコフ中東特使を中心にハマスと直接交渉を進め、米国人人質の解放にこぎ着けた。これでハマスに捕らわれている人質は58人となった。

 35人は死亡していることが確認されており、生存しているのは20人とみられている。だが、ネタニヤフ首相にしてみれば、米国が独自にハマスと交渉したことは面白くない。


新着記事

»もっと見る