続いてトランプ大統領はイスラエルが攻撃を続けているシリアとの関係正常化に踏み切り、湾岸歴訪中の14日にシャラア暫定大統領と会談、対シリア制裁を解除する方針を表明した。大統領はシャアラ氏を「強い人物で、良い仕事をしたいと思っている」と評価した。
ネタニヤフ首相はシャアラ氏を過激派と非難してきただけにそのショックは大きかった。シリアとの関係正常化についてはイスラエルには全く相談すらなかった。
ネタニヤフの好戦性にウンザリ
こうした一連の出来事は従来の米国の中東政策を大きく転換するもので、イスラエルは「取り残されるのではないか」(米紙)と懸念している。「ガザの米国所有案」までぶち上げたトランプ氏がなぜ急速にネタニヤフ首相を忌避するような決断に至ったのか。
その背景には、トランプ氏が自らの「ガザの米国所有案」が全く相手にされなかったこと、ネタニヤフ首相が米国の停戦を求める説得に耳を貸そうとせず、好戦的な姿勢を崩していないことなどが指摘されている。結局のところトランプ大統領が“ネタニヤフ疲れ”に陥り、解決の見通しのないガザ戦争にはうんざりしたことが大きな要因のようだ。
トランプ大統領は選挙期間中、ウクライナ戦争を24時間以内にやめさせると豪語していたが、ロシアのプーチン大統領との電話会談後、停戦の見通しが立たなくなり、「自分の戦争ではない」などと仲介をやめるような発言をしている。ガザ戦争にも同様に関心を失いつつあるとみられている。トランプ氏は元々、「血を見るのが嫌い」で、その性癖も政策転換に反映しているかもしれない。
しかし、ネタニヤフ首相にとってトランプ大統領の後ろ盾を失うことは政権の存続にかかわる重大事だ。首相は極右勢力を取り込むことで辛うじて政権の命脈を維持しており、トランプ氏の支持はその大きなカードだ。首相はトランプ大統領が中東歴訪を終えた直後、ガザへの大規模侵攻を再開したが、胸中は焦燥感でいっぱいとみられている。
首相はトランプ大統領がガザの飢餓に言及したこと、英仏カナダからの厳しい非難を受けたことを受け、5月19日になって2カ月半ぶりに人道支援物資を積んだトラック5台にガザ搬入を許可した。その一方でハマスへの攻撃を継続、15日以降400人が死亡、これまでのパレスチナ人の死者は5万3000人を超えた。
