テロ事件を受けてインドが行ったパキスタンのテロ支援拠点に対する攻撃は、パキスタン軍の反撃によって、両軍のミサイル、ドローン発射合戦に発展したが、5月10日、トランプ大統領のSNSへの投稿によると、アメリカの仲介によって、印パ即時停戦に至ったことになっている。その後、トランプ大統領は、カシミール問題そのものの解決に向けても仲介することに言及した。

ところが、その後、インド側から、これに反発する意見が数多く出た。インド側が有利な戦況なのになぜ停戦を受け入れたのか、「モディ首相はアメリカの言いなり」だという、戦争継続を求める意見が強く出た。
さらに、インド外務省は、印パ両軍をつなぐ電話で、パキスタン側から申し出があったために起きた停戦で、アメリカが直接関与した仲介のようなものはない、との声明も出した。
加えて、トランプ大統領の説明も、少し修正されたものとなった。カタールを訪問したトランプ大統領は、現地の米軍基地で演説し、そこで、「I don't wanna say I did but I sure as hell helped settle the problem between Pakistan and India last week,…(私が停戦をもたらしたと言いたいわけではない。でも、先週、パキスタンとインドの問題を解決するのに、間違いなく貢献したことは確かだ)」と演説した。ということは、トランプ大統領が停戦を直接アレンジしたのではなく、停戦に至るような状況を作り出すことに貢献したといった言い方である。
この件に関して、モディ首相は黙ったままだ。なぜ沈黙なのだろうか。本稿は、この件の分析を試みる。まず、経緯の整理からだ。