2025年12月5日(金)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年5月30日

法廷闘争の行方は

 そして翌5月1日夜、今回の大統領令が発表されたのである。CPBからの資金は、PBSの予算の約16%、NPRの場合は約1%であるため、即座に放送が取りやめになるというわけではない。

 ただ、それぞれのグループ局のうち、支援者が多く資金が潤沢な大都市の局は痛手が少ないが、地方の弱小局の場合、CPBからの資金に頼っている割合が大きく、危険である。また、そのような地方においては、ニュースを公共放送に頼らざる得ない人の割合も多い。

 今後は戦いの場を裁判所に移していくことになる。米国の地方裁判所は、最高裁によって指導されているわけではなく、また、民主党系の裁判官が多数を占めている裁判所も多い。そのため、いくら連邦最高裁において共和党系判事が多数派を占めているからといって、すぐに政権優位に決着するわけではない。

 その間に26年の中間選挙で議会において民主党が多数派になるのを期待し、28年の大統領選挙を待つというのが公共放送側の作戦かもしれない。一方、政権側は、意に沿わない行動をとる裁判官本人を起訴するような前代未聞の手段をとってくるので、今後NPRやPBSに対してどのような手段に出るか予断を許さない。

 自分の気に入らない報道機関を大統領が潰すことが出来るとすれば、大きな民主主義の危機と言ってよいだろう。今後の成り行きに目が離せない。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る