2025年12月5日(金)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年5月30日

 PBSへの攻撃は、LGBTQ+(性的少数者)の扱いに集中した。PBSの番組が、ジェンダーについて子供たちを洗脳し、性転換へと導いているというのである。グリーン委員長は、PBSがドラァグクイーンを子供番組で取り上げて強調していると批判し、銀色の衣装に身をまとったドラァグクイーン、リル・ミス・ホット・メスの巨大なパネルを掲げさせた。そしてリル・ミス・ホット・メスが、以前ニューヨークのPBS系列局の3歳から8歳向けの子供番組「レッツラーン」に登場したときの映像を流した。

グリーン委員長が掲げたドラァグクイーンのポスター(UPI/アフロ)

 グリーンは、このドラァグクイーンを「子供の捕食者」であり「怪物」であると述べ、子供の歌を歌う映像を見せて「おぞましい」と吐き捨てた。グリーンは、「本日聞いた内容を踏まえ、私たちはCPBの完全な資金凍結と解体を求めることを表明する」と述べて公聴会を締めくくった。

止むことのなかったトランプ政権による攻撃

 その後、PBSの人気番組ニュースアワーで、インタビューされるゲストの中に、トランプ政権寄りの人が以前に比べて増えたように見えた。政権側のゲストがトランプ的見解をまくし立てても、司会者はこれまでのように割って入ることなく聞くことが増えた。それが政権への対応なのかどうかは不明だが、変化が見られた。

 さらに、トランプ政権の攻撃はやむことはなかった。4月28日にトランプはCPBの5人の理事のうち副理事長と2人の理事の3人の解雇を試みた。それに対してCPB側は、翌29日朝、大統領にそのような力はないと反訴した。

 同じ29日の午後、DOGE(政府効率化省)の担当者は、CPB理事会の残る2人のメンバーである理事長と理事に対して、電子メールを送った。CPBについてもっと知りたいので、明日か明後日時間をつくれないかというのである。初対面にもかかわらず、ファーストネームの略称で呼び、いきなり「時間を作れ」などと礼にかなったとは言えないメールであった。

 それに対してCPB側も負けてはいなかった。翌30日、担当者が木で鼻をくくったような返信を行ったのである。DOGE側の使ったメールアドレスは間違っており、また、副理事長もいまだ職にあるのでそちらにこれからは連絡するようにと述べた上で、CPBは行政府の一部ではなく、政府効率化省などに監督されるいわれはないと書いたのである。この対応に政権側の怒りがどれほどかは想像にかたくない。


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